退職金2,000万円を普通預金に入れたまま5年放置すると、インフレ率2%で実質価値は約1,808万円に目減りする。つまり「何もしない」だけで約192万円を失う計算だ。

にもかかわらず、退職金の使い道1位は「預貯金」。なぜ多くの人が最も損する選択をしてしまうのか。

退職金の使い道ランキングTOP10は?

以下は各種調査データを基にした退職金の使い道ランキングだ。

退職金の使い道ランキングTOP10

順位使い道割合
1位預貯金44.2%
2位住宅ローン返済21.3%
3位生活費の補填14.8%
4位旅行・レジャー8.6%
5位投資信託・株式投資7.2%
6位リフォーム・住宅修繕5.1%
7位子ども・孫への援助4.3%
8位保険商品の購入3.8%
9位自動車の購入2.9%
10位起業・事業投資1.4%

※複数回答のため合計は100%を超える。

注目すべきは、1位の「預貯金」と5位の「投資」の間に37ポイントもの差があることだ。退職金の運用に踏み切れる人は少数派でいまだに7人に1人以下。

ここまでで分かったこと
  • 使い道1位は預貯金(44.2%)。投資は7.2%で少数派
  • 「何もしない」は安全に見えてインフレリスクを抱えている

1位「預貯金」の何が問題ですか?

預貯金自体は悪くない。問題は全額を普通預金に放置することだ。

預貯金とは、銀行にお金を預け入れることで元本が保証される金融商品のことだ。普通預金・定期預金・貯蓄預金などが含まれる。

普通預金の金利は2026年時点で年0.1%前後。一方、消費者物価指数の上昇率(インフレ率)は年2%前後で推移している。

つまり、2,000万円を預けても年間の利息は約2万円。インフレによる実質的な目減りは約40万円。差し引き年間38万円の実質損失が発生している。

当メディアの試算(国税庁・厚労省統計に基づく決定論的計算)によると、退職金2,000万円を普通預金のみで保有した場合の15年後の実質価値は約1,486万円。名目上は2,000万円のままだが、購買力で約514万円を失う。

2,000万円の実質価値の推移(インフレ率2%想定)

経過年数名目額実質価値(購買力)目減り額
0年2,000万円2,000万円0円
5年2,000万円1,808万円▲192万円
10年2,000万円1,636万円▲364万円
15年2,000万円1,486万円▲514万円
20年2,000万円1,344万円▲656万円
ここまでで分かったこと
  • 普通預金に放置すると年間約38万円の実質損失
  • 15年で購買力は約514万円目減りする

2位「住宅ローン返済」は正解ですか?

住宅ローン返済は条件次第で正解にも不正解にもなる。

Aさん(56歳・金融業・退職金2,200万円)は住宅ローン残高1,200万円(金利0.6%・残期間10年)を全額繰上返済した。節約できた利息は約36万円。しかし手元資金が1,000万円に減り、その後の子どもの結婚費用で生活費を切り崩すことになった。

Bさん(59歳・建設業・退職金1,800万円)は住宅ローン残高600万円(金利1.8%・残期間5年)を繰上返済し、節約利息は約28万円。残りの1,200万円は生活防衛資金と運用に回した。

ポイントは「返済後に手元にいくら残るか」だ。ローン返済で手元資金が500万円を切るなら、全額返済は避けた方がいい。

ここまでで分かったこと
  • 住宅ローン返済は金利と残高で判断する
  • 返済後に手元資金500万円以上を確保できるか確認

4位「旅行」に使うのはもったいないですか?

旅行への支出は金額次第では合理的だ。

退職は人生の節目であり、夫婦で50〜100万円の記念旅行に使うことは精神的なリターンがある。問題は200万円、300万円と膨らむケースだ。

退職金の「ご褒美枠」は退職金総額の5%以内に抑えるのが目安。2,000万円なら100万円まで。これを超えると、長期の資産形成に影響が出始める。

5位「投資」を始めるなら何から?

退職金で初めて投資する場合、少額・分散・長期が3原則だ。

退職金運用の3原則

原則内容具体例
少額からいきなり全額投資しないまず100万円から。慣れたら増額
分散する1つの商品に集中しない全世界株式インデックスファンド
長期で持つ10年以上の時間軸で考える積立投資で12〜24ヶ月に分散購入

50代後半で初めて投資をする場合、最初の3ヶ月は100万円程度で「値動きに慣れる」ことが重要だ。いきなり1,000万円を投入すると、5%の下落(▲50万円)でパニック売りする人が多い。

ここまでで分かったこと
  • 初めての投資は100万円から。値動きに慣れてから増額
  • 投資の3原則は「少額・分散・長期」

ランキング外の「最適解」は何ですか?

ランキング上位の使い道をそのまま真似するのではなく、自分の状況に合わせた配分が最適解だ。

Cさん(57歳・公務員・退職金2,100万円)の配分を見てみよう。

  • 生活防衛資金: 360万円(月30万円 × 12ヶ月)
  • 住宅ローン残額返済: 400万円
  • 旅行・記念品: 80万円(ご褒美枠)
  • 新NISA枠での運用: 360万円(年間枠)
  • iDeCo移管分の運用: 200万円
  • 残り定期預金: 700万円(中期資金として2年後のリフォーム用)

合計2,100万円を6つの用途に配分している。「全額預貯金」でも「全額投資」でもなく、目的別に分けることで手取りを最大化している。

まとめ

退職金の使い道ランキング1位は「預貯金」だが、全額放置はインフレで年間38万円の実質損失を生む。ランキングを参考にしつつも、自分の住宅ローン残高・生活費・将来の支出予定に合わせて目的別に配分することが、手取り最大化への近道だ。

「みんながやっていること」ではなく「自分に必要なこと」で退職金の使い道を決めてほしい。