退職金1,000万円を全額定期預金に入れた場合、20年後の利息は約30万円。一方、半分の500万円をNISAで年利3%運用すれば、その500万円だけで約400万円の利益が出る。しかも非課税だ。
「1,000万円しかないから運用は怖い」——その考えが、20年後の約370万円の差を生む。
退職金1,000万円はどう配分すればいい?
安全資産50%+NISA50%の「半分守り・半分攻め」が、1,000万円の退職金運用における最も合理的な配分だ。
退職金1,000万円は、大卒・勤続20〜24年の平均退職金(約1,027万円)とほぼ同額。決して少なくないが、2,000万円の人と比べると「失敗できる余地」が小さい。だからこそ安全資産の比率を高めに設定する。
退職金1,000万円の配分モデル
| 資金区分 | 金額 | 配分比率 | 運用先 | 期待利回り |
|---|---|---|---|---|
| 生活防衛資金 | 300万円 | 30% | 定期預金 | 0.3% |
| 安全運用枠 | 200万円 | 20% | 個人向け国債(変動10年) | 0.72% |
| NISA運用枠 | 500万円 | 50% | 全世界株式インデックス | 3〜5% |
| 合計 | 1,000万円 | 100% | — | 約2.5%(加重平均) |
生活防衛資金とは、収入が途絶えた場合に生活を維持するための緊急資金を指す。退職後は年金受給開始までの生活費を賄う役割も果たす。月の生活費25万円なら12ヶ月分の300万円が最低ラインだ。
- 1,000万円は「半分守り・半分攻め」が基本
- 生活防衛資金300万円(生活費1年分)は必ず確保
安全資産500万円はどう置く?
定期預金300万円+個人向け国債200万円。この2つで安全資産500万円を構成する。
定期預金は「すぐ使えるお金」として300万円を確保する。ペイオフ制度により1金融機関あたり1,000万円まで元本が保証される。金利は2026年時点で年0.125〜0.3%と低いが、流動性の高さが最大のメリットだ。
個人向け国債(変動10年)は「使い道未定の安全資金」に最適だ。国が元本を保証し、半年ごとに金利が見直される。2026年7月発行分は年0.72%で、200万円預ければ年約14,400円の利息が得られる。
Aさん(55歳・中小企業勤務・退職金980万円)のケースを見よう。Aさんは60歳の定年まであと5年。退職金980万円のうち300万円を定期預金に入れ、200万円を個人向け国債で運用。残り480万円は毎年NISAに120万円ずつ、4年かけて投入する計画を立てた。
安全資産の使い分け
| 項目 | 定期預金 | 個人向け国債(変動10年) |
|---|---|---|
| 役割 | 緊急時の生活費 | 中長期の安全運用 |
| 金利 | 0.125〜0.3% | 0.72%(2026年7月) |
| 元本保証 | 1,000万円まで | 全額 |
| 引出し | いつでも可 | 1年経過後 |
| 配分額 | 300万円 | 200万円 |
- 定期預金は「すぐ使えるお金」、国債は「安全に置くお金」
- 国債は1年経過で換金可能。急な出費にも対応できる
NISA500万円はどう運用する?
NISA枠に500万円を入れるなら、年間360万円の上限を意識しつつ、2年かけて投入するのが現実的だ。
NISAの年間投資上限は360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)。500万円なら初年度に360万円、2年目に140万円で完了する。
商品選びはシンプルに。全世界株式インデックスファンド(eMAXIS Slim全世界株式)1本でいい。1,000万円という金額を考えると、複数商品に分けるメリットよりも管理の手間が上回る。
当メディアの試算(国税庁・厚労省統計に基づく決定論的計算)によると、500万円を全世界株式インデックスで年利3%・20年運用した場合、約903万円に成長する。運用益403万円は全額非課税だ。課税口座なら約82万円が税金で消えるが、NISAならゼロ。
NISA500万円の20年シミュレーション
| 運用利回り | 20年後の金額 | 運用益 | 非課税メリット |
|---|---|---|---|
| 年2% | 約743万円 | 約243万円 | 約49万円 |
| 年3% | 約903万円 | 約403万円 | 約82万円 |
| 年5% | 約1,327万円 | 約827万円 | 約168万円 |
- NISA500万円は2年で投入完了
- 全世界株式インデックス1本でシンプルに運用
1,000万円で毎月取り崩すと何年もつ?
月5万円ずつ取り崩す場合、運用なしで約16年8ヶ月。年利2%で運用しながらなら約19年もつ。
退職金1,000万円を「老後の補填資金」として使う場合のシミュレーションを見よう。年金だけでは不足する月額を退職金から補う想定だ。
退職金1,000万円の取り崩しシミュレーション
| 月額取り崩し | 運用なし | 年利1%運用 | 年利2%運用 |
|---|---|---|---|
| 月3万円 | 約27年9ヶ月 | 約31年 | 約36年 |
| 月5万円 | 約16年8ヶ月 | 約18年 | 約19年 |
| 月7万円 | 約11年11ヶ月 | 約12年6ヶ月 | 約13年2ヶ月 |
| 月10万円 | 約8年4ヶ月 | 約8年8ヶ月 | 約9年1ヶ月 |
65歳から月5万円を取り崩す場合、運用しなければ81歳で底をつく。年利2%で運用しながら取り崩せば84歳まで持続する。この3年の差は大きい。
Bさん(63歳・元販売業・退職金1,050万円)のケースでは、500万円を安全資産に確保し、500万円をNISAで運用。65歳の年金受給開始後は、年金の不足分(月4万円)を安全資産から取り崩し、NISA部分は70歳まで運用を継続した。70歳時点でNISAの500万円は約580万円に成長し、その後の取り崩し余力が生まれた。
- 月5万円取り崩しなら運用ありで約19年(84歳まで)
- 安全資産から先に取り崩し、NISAは運用継続が鉄則
1,000万円の運用で絶対にやってはいけないことは?
退職金1,000万円で最もやってはいけないのは「全額を1つの商品に一括投入する」ことだ。
1,000万円は2,000万円の人と比べて失敗を取り戻す余力が小さい。以下の3つは絶対に避けるべきだ。
退職金1,000万円でやってはいけないこと
| NG行動 | リスク | 代わりにやるべきこと |
|---|---|---|
| 全額を個別株に投入 | 50%下落で500万円の損失 | インデックスファンドで分散 |
| 銀行窓口で勧められた投信を即決 | 高コスト+ミスマッチ | 1ヶ月の検討期間を取る |
| 生活防衛資金を残さず全額運用 | 急な出費に対応不能 | 最低300万円は定期預金に確保 |
「1,000万円しかないから、大きく増やさないと」という焦りが最大の敵だ。1,000万円を年利2.5%で堅実に運用すれば、20年後に約1,640万円。十分な資産防衛になる。
- 1,000万円は失敗余地が小さい。堅実な分散が必須
- 「大きく増やそう」という焦りが最大のリスク
まとめ:1,000万円は「守り重視」で着実に増やす
退職金1,000万円の運用は、3つのステップで進める。
- 生活防衛資金300万円を定期預金で確保する
- 安全資産200万円を個人向け国債に置く
- 残り500万円をNISAで全世界株式インデックスに投入する(2年計画)
1,000万円を「少ない」と嘆く必要はない。大卒・勤続20〜24年の平均退職金とほぼ同額だ。堅実な運用で20年後に約1,400万円。この差額400万円が、老後の安心を決定的に変える。