税務調査で退職金が否認される理由の1つに「議事録の不備」がある。金額の計算が適正でも、議事録がなければ「決議していない退職金」と見なされる。

役員退職金に株主総会決議は必要ですか?

必要だ。会社法361条により、取締役の報酬等(退職金含む)は株主総会の決議で定める。

定款に退職金規程への委任規定がある場合でも、株主総会で個別の支給を決議するのが実務上の安全策だ。「退職金規程に基づく」だけでは、税務署に十分な証拠として認められない場合がある。

議事録に記載すべき5項目は?

税務調査で問題にならない議事録の必須項目は以下の5つ。

  1. 退職する役員の氏名と退職事由: 「代表取締役○○が令和○年○月○日をもって退任する」
  2. 退職金の金額と算定根拠: 金額だけでなく「最終月額報酬○万円 × 在任○年 × 功績倍率○.○」の計算過程
  3. 支給時期と方法: 「令和○年○月○日に一括で支給する」(分割の場合は計画も記載)
  4. 決議の賛否: 「出席株主の議決権の○○%の賛成をもって可決」
  5. 出席株主の記名押印: 議長および出席株主
ここまでで分かったこと
  • 議事録の5必須項目: 退職者・金額根拠・支給時期方法・決議賛否・記名
  • 算定根拠(功績倍率法の計算過程)を明記することが税務調査対策の要

議事録のひな形

以下が実務で使える株主総会議事録の記載例だ。

第○号議案 退職慰労金支給の件

議長より、令和○年○月○日をもって代表取締役を退任する
○○○○氏に対し、在任中の功績に報いるため、下記のとおり
退職慰労金を支給したい旨を提案し、その可否を諮ったところ、
出席株主の議決権の過半数の賛成をもって原案どおり可決された。



1. 支給対象者: 代表取締役 ○○○○
2. 退職事由: 任期満了による退任
3. 退職慰労金額: 金○○○○万円
   (算定根拠: 最終月額報酬○○万円 × 在任○○年
    × 功績倍率○.○ = ○○○○万円)
4. 支給時期: 令和○年○月○日
5. 支給方法: 銀行振込により一括支給

取締役会に一任する決議でもよいですか?

株主総会で「退職金の具体的金額、支給時期等は取締役会に一任する」という決議も法律上は有効だ。

ただし税務調査の観点では、具体的な金額と算定根拠を株主総会で直接決議するほうが安全だ。取締役会一任方式の場合は、取締役会議事録にも金額と算定根拠を明確に記載する必要がある。

ここまでで分かったこと
  • 取締役会一任方式も有効だが、直接決議のほうが税務調査に強い
  • 議事録は10年間本店に保管義務あり

まとめ

議事録は「退職金を決議した証拠」であり、損金算入の根拠書類だ。金額の適正性と同じくらい、議事録の整備は重要。

書式は難しくない。5項目を漏れなく記載し、算定根拠を明記すること。税務調査で「なぜこの金額にしたのか」と問われたとき、議事録が回答になる。