決算期末に退職金を支給しようとしたが、資金が足りない。来期に払ったら損金にできるのか。未払計上で今期の損金にできるのか。
答えは「どちらも可能だが、条件がある」だ。
役員退職金の損金算入時期はいつですか?
原則は株主総会で支給額が確定した事業年度だ。
法人税法上、役員退職金は「株主総会の決議等によりその額が具体的に確定した日の属する事業年度」の損金の額に算入する。
一方、法人税基本通達9-2-28では「退職した事業年度に損金経理をした場合には、これを認める」とも規定している。つまり以下の2つの方法がある。
- 確定基準: 株主総会決議日の事業年度で計上
- 支給基準: 実際に支給した事業年度で損金経理
実務上は、法人の利益状況に応じてどちらかを選択する。ただし一度選択した方法を恣意的に変更することは認められない。
- 損金算入は「確定基準」(決議日)か「支給基準」(支給日)の2つ
- 利益状況に応じて選択可能だが、恣意的な変更は不可
分割支給の場合はどう損金算入しますか?
資金繰りの関係で退職金を2〜3年に分けて支給するケースは実務上よくある。
分割支給の場合、実際に支給した各事業年度で損金算入できる(支給基準)。
ただし以下の条件を満たす必要がある。
- 分割支給の合理的理由がある(資金繰り、多額のため一括支給が困難等)
- 株主総会で支給総額・分割回数・各回の支給予定時期を決議
- 決議内容に従って実際に支給する
注意すべきは「意図的な利益操作」と見なされないこと。たとえば利益が出た年度だけ支給するような分割は否認されるリスクがある。
未払計上で損金にできますか?
株主総会で金額が確定していれば、未払計上による損金算入は可能だ(確定基準)。
ただし以下のリスクがある。
- 長期間の未払: 1年以上未払のまま放置すると、「実態として退職金ではない」と判断される可能性がある
- 実質的に退職していないケース: 未払のまま引き続き経営に関与していると、退職の事実自体を否定される
未払計上する場合は、支給スケジュールを明確にし、速やかに支給することが重要だ。
- 未払計上での損金算入は可能だが、長期未払は否認リスク
- 分割支給は支給計画の決議と合理的理由が条件
決算期をまたぐ場合の注意点は?
3月決算法人で2月に社長が退任し、3月の株主総会で退職金を決議する場合は、その3月決算期の損金に算入できる。
一方、4月の株主総会で決議した場合は翌期の損金になる。ただし「2月に退任した事業年度に損金経理した」場合は、通達9-2-28の支給基準で当期損金にすることも可能だ。
決算期末に近い退任の場合は、株主総会の開催タイミングと損金経理のタイミングを事前に計画することが重要だ。
まとめ
損金算入の時期は「確定基準」と「支給基準」の2つがある。分割支給も認められる。
ポイントは、いずれの方法でも株主総会決議と議事録が前提条件だということ。決議なしの退職金支給は、損金算入以前の問題になる。