退職金1,500万円を全額定期預金に入れた場合、20年後に得られる利息は約45万円。月額に直すとわずか1,875円だ。一方、1,000万円をNISAで年利3%運用すれば、運用部分だけで約445万円の利益を非課税で受け取れる。全額預金との差は約400万円——退職金の使い方ひとつで、老後の安心度がまるで変わる。
退職金1,500万円はどう配分すればいい?
生活防衛資金500万円+安全資産200万円+NISA800万円の「3分割モデル」が、1,500万円の退職金運用における最適な配分だ。
1,500万円は大卒・勤続25〜29年の平均退職金(約1,458万円)とほぼ同額。1,000万円の人より余裕があるが、2,000万円の人ほど攻められない。この「中間の金額」だからこそ、守りと攻めのバランスが勝負を分ける。
退職金1,500万円の配分モデル
| 資金区分 | 金額 | 配分比率 | 運用先 | 期待利回り |
|---|---|---|---|---|
| 生活防衛資金 | 500万円 | 33% | 定期預金 | 0.3% |
| 安全運用枠 | 200万円 | 13% | 個人向け国債(変動10年) | 0.72% |
| NISA運用枠 | 800万円 | 54% | 全世界株式インデックス | 3〜5% |
| 合計 | 1,500万円 | 100% | — | 約2.6%(加重平均) |
生活防衛資金とは、収入が途絶えた場合に生活を維持するための緊急資金を指す。月の生活費25万円なら20ヶ月分の500万円を確保する。60歳で退職し、再就職しない場合は65歳の年金受給開始まで5年間の生活費が必要だ。500万円は「何があっても手をつけない鉄壁の守り」として定期預金に置く。
- 1,500万円は生活防衛500万+安全200万+NISA800万の3分割
- 生活防衛資金500万円は絶対に運用に回さない
NISA800万円はどうやって投入する?
年間360万円ずつ、3年目の途中で投入完了する計画が現実的だ。
NISAの年間投資上限は360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)。800万円なら1年目に360万円、2年目に360万円、3年目に80万円で完了する。商品はeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)1本でいい。
退職金1,500万円のNISA投入スケジュール
| 年次 | つみたて投資枠 | 成長投資枠 | 年間投入額 | NISA累計 | 待機資金(国債) |
|---|---|---|---|---|---|
| 1年目 | 120万円 | 240万円 | 360万円 | 360万円 | 440万円 |
| 2年目 | 120万円 | 240万円 | 360万円 | 720万円 | 80万円 |
| 3年目 | 80万円 | 0円 | 80万円 | 800万円 | 0円 |
NISA投入待ちの資金は個人向け国債(変動10年)で待機させる。2026年7月発行分は年0.72%の利息が付き、1年経過後に換金可能だ。普通預金に寝かせるよりも効率的に資金を活用できる。
Aさん(58歳・地方銀行勤務・退職金1,480万円)のケースを見よう。Aさんは60歳の定年まで2年。退職金を受け取った直後は何もせず、1ヶ月かけて配分を決めた。500万円を定期預金、200万円を個人向け国債、780万円をNISA用に確保。1年目は360万円をNISAに投入し、残りの420万円は国債で待機。2年目以降は年初に国債を換金してNISAに移す計画を実行した。
- NISA800万円は3年で投入完了
- 投入待ち資金は個人向け国債で利息を稼ぐ
安全資産700万円はどこに置く?
定期預金500万円+個人向け国債200万円。役割が違うから分ける。
定期預金は「すぐ使えるお金」だ。ペイオフ制度により1金融機関あたり1,000万円まで元本が保証される。金利は2026年時点で年0.125〜0.3%と低いが、いつでも引き出せる流動性が最大のメリットだ。
個人向け国債(変動10年)は「使い道未定の安全資金」に最適だ。国が元本を保証し、半年ごとに金利が見直される。200万円を預ければ年約14,400円の利息が得られる。
安全資産の使い分け
| 項目 | 定期預金 | 個人向け国債(変動10年) |
|---|---|---|
| 役割 | 緊急時の生活費 | 中長期の安全運用+NISA待機資金 |
| 金利 | 0.125〜0.3% | 0.72%(2026年7月) |
| 元本保証 | 1,000万円まで | 全額 |
| 引出し | いつでも可 | 1年経過後 |
| 配分額 | 500万円 | 200万円 |
- 定期預金は「すぐ使えるお金」、国債は「安全に増やすお金」
- 国債は1年経過で換金可能。急な出費にも対応できる
1,500万円を運用すると20年後はいくらになる?
当メディアの試算(国税庁・厚労省統計に基づく決定論的計算)によると、800万円を全世界株式インデックスで年利3%・20年運用した場合、約1,445万円に成長する。運用益645万円は全額非課税だ。
退職金1,500万円の20年後シミュレーション
| シナリオ | 安全資産700万円(20年後) | NISA800万円(20年後) | 合計 | 運用益 |
|---|---|---|---|---|
| 全額定期預金 | 約1,545万円 | — | 約1,545万円 | 約45万円 |
| 3分割モデル(年利2%) | 約717万円 | 約1,190万円 | 約1,907万円 | 約407万円 |
| 3分割モデル(年利3%) | 約717万円 | 約1,445万円 | 約2,162万円 | 約662万円 |
| 3分割モデル(年利5%) | 約717万円 | 約2,123万円 | 約2,840万円 | 約1,340万円 |
年利3%のケースで見ると、20年後の資産総額は約2,162万円。全額定期預金との差は約617万円。この617万円が「運用するかしないか」の判断だけで生まれる。しかもNISA枠を使っているから運用益は非課税。課税口座なら約131万円が税金で消えるが、NISAならゼロだ。
- 3分割モデル(年利3%)で20年後に約2,162万円
- 全額預金との差は約617万円。NISAで非課税
1,500万円を毎月取り崩すと何年もつ?
月5万円ずつ取り崩す場合、運用なしで25年(90歳まで)。年利2%で運用しながらなら約30年(95歳まで)もつ。
退職金1,500万円の取り崩しシミュレーション
| 月額取り崩し | 運用なし | 年利1%運用 | 年利2%運用 |
|---|---|---|---|
| 月3万円 | 約41年8ヶ月 | 約52年 | 資産枯渇せず |
| 月5万円 | 約25年 | 約29年 | 約30年 |
| 月7万円 | 約17年10ヶ月 | 約19年 | 約20年 |
| 月10万円 | 約12年6ヶ月 | 約13年2ヶ月 | 約13年10ヶ月 |
65歳から月5万円を取り崩す場合、運用なしでも90歳まで持つ。年利2%で運用しながらなら95歳まで。5年の差は大きい。月7万円の取り崩しでも、運用ありなら85歳まで持続する。
Bさん(62歳・元事務職・退職金1,520万円)のケースでは、500万円を定期預金、200万円を個人向け国債、820万円をNISAに配分。65歳の年金受給開始まで3年間は定期預金から月14万円を取り崩し、年金受給開始後は年金の不足分(月5万円)のみを安全資産から補填。NISAは70歳まで運用を続け、約952万円に成長させてから取り崩しを開始した。
- 月5万円取り崩しなら運用ありで約30年(95歳まで)
- 安全資産から先に取り崩し、NISAは運用継続が鉄則
1,500万円で手取りを最大化する方法は?
退職金の手取りを最大化するには、退職所得控除を使い切ることが最優先だ。
勤続30年以上なら退職所得控除は1,500万円を超える(勤続30年で1,500万円、31年で1,570万円)。つまり勤続30年以上で退職金1,500万円なら税金ゼロだ。
退職金1,500万円の手取り(勤続年数別)
| 勤続年数 | 退職所得控除 | 課税退職所得 | 税額 | 手取り |
|---|---|---|---|---|
| 20年 | 800万円 | 350万円 | 約55万円 | 約1,445万円 |
| 25年 | 1,150万円 | 175万円 | 約27万円 | 約1,473万円 |
| 30年 | 1,500万円 | 0円 | 0円 | 1,500万円 |
| 35年 | 1,850万円 | 0円 | 0円 | 1,500万円 |
勤続25年の場合、税額は約27万円。この27万円を取り戻す方法はないが、手取り1,473万円を正しく運用すれば20年で十分に取り戻せる。まず手取りを確定させ、そのうえで配分設計に進む。順番を間違えてはいけない。
- 勤続30年以上なら退職金1,500万円は税金ゼロ
- 手取りを確定してから配分設計に進む
まとめ:1,500万円は「中間の金額」だからこそ配分が命
退職金1,500万円の運用は、3つのステップで進める。
- 生活防衛資金500万円を定期預金で確保する
- 安全資産200万円を個人向け国債に置く
- 残り800万円をNISAで全世界株式インデックスに投入する(3年計画)
1,500万円は1,000万円より余裕があり、2,000万円より慎重さが求められる。3分割モデルで堅実に運用すれば、20年後に約2,162万円。退職金を受け取って「どうしよう」と迷う時間が長いほど、定期預金に眠る資金の機会損失は膨らむ。まず生活防衛資金を確保し、残りを3年かけてNISAに移す。それだけで老後の安心は大きく変わる。