退職金2,000万円をロボアドバイザー(WealthNavi)で20年間運用した場合、手数料の総額は約340万円。同じ2,000万円をeMAXIS Slim全世界株式でNISA積立すると、手数料は約18万円。差額は約322万円——これは退職後の生活費1年分以上に相当する。

ロボアドバイザーとは何か?退職金運用に使えるのか?

ロボアドバイザーとは、AIアルゴリズムが投資先の選定・配分・リバランスを自動で行う資産運用サービスを指す。退職金運用に使えるが、コスト面で注意が必要だ。

代表的なロボアドバイザーはWealthNavi、THEO、SUSTEN、楽ラップなどがある。WealthNaviは預かり資産1.2兆円超(2026年時点)で国内最大手だ。

主要ロボアドバイザーの比較

サービス名手数料(税込)最低投資額NISA対応投資対象
WealthNavi年1.1%1万円あり(おまかせNISA)海外ETF 7銘柄
THEO年1.1%1万円あり海外ETF 最大30銘柄
SUSTEN成果報酬型10万円なし独自ファンド
楽ラップ年0.715%10万円なし国内投信

退職金は「やり直しの効かない資金」だ。手数料年1.1%は少額に見えるが、2,000万円 × 1.1% = 年22万円。20年で単純計算440万円、複利の影響を考慮しても約340万円が手数料として引かれる。

ここまでで分かったこと
  • ロボアドバイザーは自動運用サービス。手数料は年1.1%が主流
  • 2,000万円なら年22万円の手数料。20年で約340万円

WealthNaviと自分でNISA積立、どちらが得か?

手取り最大化の観点では、自分でNISA積立が圧倒的に有利だ。20年運用で約230万円の手取り差が生まれる。

当メディアの試算(金融庁資産運用シミュレーションに基づく決定論的計算)で、退職金1,000万円を年利5%で20年運用した場合の比較を見よう。

WealthNavi vs NISA積立の20年比較(元本1,000万円・年利5%前提)

項目WealthNavi自分でNISA積立差額
運用後の資産額約2,653万円約2,653万円—
手数料総額(20年)約230万円約12万円約218万円
運用益への課税20.315%(NISA枠外)0%(NISA枠内)—
税引後の手取り約2,089万円約2,641万円約552万円

WealthNaviのおまかせNISA(NISA枠内運用)を使えば課税の差はなくなるが、それでも手数料差が年1.04%(1.1% − 0.05775%)ある。1,000万円で20年なら手数料差だけで約218万円の差だ。

Aさん(61歳・メーカー退職・退職金2,100万円)のケースを見よう。Aさんは「投資は難しそう」と考え、退職金のうち1,000万円をWealthNaviに入れた。1年後に手数料11万円が引かれたことに気づき、自分でeMAXIS Slim全世界株式をNISAで積み立てる方法に切り替えた。切り替え後の年間コストは約5,800円に減った。

ここまでで分かったこと
  • 20年で手数料差は約218万円。課税差を加えると約552万円
  • WealthNaviからNISA積立への切り替えは年間コスト95%削減

ロボアドバイザーが向いている人・向いていない人は?

ロボアドバイザーが向いているのは「投資に一切関わりたくない人」だけだ。それ以外はNISA積立のほうが合理的だ。

ロボアドバイザーの向き・不向き

判定特徴具体的な行動パターン
向いている投資に全く興味がなく、一切の判断を任せたい証券口座の開設手続きすら面倒に感じる
向いている資産総額が5,000万円以上で手数料負担が相対的に小さい手数料より時間コストを重視する
向いていないインデックスファンドの購入ができるネット証券の操作に抵抗がない
向いていない手取り最大化を重視する手数料差の大きさを理解している

退職金の運用で最も重要なのは「長期間にわたって低コストで市場に居続けること」だ。ロボアドバイザーのアルゴリズムが生み出す超過リターンは、年1.1%の手数料を上回る根拠がない。過去の実績でも、WealthNaviの運用成績は全世界株式インデックスファンドとほぼ同等だ。同じ成績なら手数料が安いほうが手取りは大きくなる。

ここまでで分かったこと
  • ロボアドが向くのは「投資に一切関わりたくない人」だけ
  • 同じ成績なら手数料が安い方が手取りは大きい

自分でNISA積立を始める最低限のステップは?

ネット証券でNISA口座を開設し、全世界株式インデックスファンドを毎月積み立てるだけだ。必要な作業は初回30分、その後は年1回の確認で済む。

自分でNISA積立を行う場合の手順は以下の4ステップだ。

  1. ネット証券でNISA口座を開設する(SBI証券 or 楽天証券、所要時間15分)
  2. eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)を選ぶ(つみたて投資枠で月10万円設定)
  3. 成長投資枠で同商品を月20万円設定する(年間合計360万円)
  4. 年1回、残高を確認する(リバランス不要、ほったらかしでOK)

Bさん(58歳・公務員・退職金2,400万円)は「パソコンが苦手」と不安だったが、子どもにSBI証券の口座開設を手伝ってもらい、毎月30万円の積立設定を完了。以後2年間、自分がやったことは「年に1回アプリで残高を見る」だけだったという。

NISA積立の年間作業量

作業内容頻度所要時間
口座開設初回のみ約30分
積立設定初回のみ約15分
残高確認年1回約5分
リバランス不要0分
年間合計—約50分(初年度)、約5分(2年目以降)

ロボアドバイザーの「おまかせ」は確かに楽だが、自分でNISA積立を設定する手間は初回45分+年5分にすぎない。年間5分の作業をサボるために年22万円を払うのは合理的ではない。

ここまでで分かったこと
  • NISA積立の設定は初回45分。以後は年1回・5分の確認だけ
  • 年5分の作業を省くために年22万円払うのは非合理

まとめ:退職金にロボアドバイザーは「高すぎる保険料」

退職金でロボアドバイザーを使うことは、投資判断の不安に対する「保険」だ。しかしその保険料は年1.1%、20年で約340万円。退職金2,000万円の運用なら、以下の方針が手取り最大化につながる。

  1. 自分でNISA積立ができるなら迷わずNISA(年間コスト約1.2万円)
  2. どうしても自分でできないならWealthNaviのおまかせNISA(年間コスト約22万円)
  3. NISA枠外でのロボアドバイザーは避ける(手数料+課税の二重負担)

投資の「難しさ」は幻想だ。全世界株式インデックスファンドを1本買って放置する——これだけでロボアドバイザーと同等の運用成果が、19分の1のコストで手に入る。