退職金2,000万円を銀行窓口で相談し、勧められた投資信託を購入。購入手数料3%で60万円、信託報酬1.5%で年30万円。10年間の総コストは約360万円だ。

一方、ネット証券で自分で全世界株式インデックスを買えば、購入手数料ゼロ、信託報酬0.05%で年1万円。10年間の総コストは約10万円。この差350万円は、始め方を知っているかどうかだけで決まる。

ステップ1|口座はどこで開設すればいいですか?

ネット証券で口座を開設する。SBI証券か楽天証券の2択だ。

銀行窓口ではなくネット証券を選ぶ理由は1つ。取扱商品のコストが圧倒的に低いからだ。

銀行窓口 vs ネット証券のコスト比較

項目銀行窓口ネット証券
口座開設費無料無料
投信の購入手数料1〜3%0円(ノーロード)
投信の信託報酬(平均)年1.0〜1.8%年0.05〜0.2%
取扱ファンド数20〜50本2,000本以上
NISA対応ありあり

ネット証券の口座開設に必要なものは3つ。

  1. マイナンバーカード(または通知カード+本人確認書類)
  2. メールアドレス
  3. 銀行口座(入金用)

Aさん(60歳・製造業・退職金2,200万円・投資未経験)は、スマートフォンからSBI証券の口座開設を申し込み、マイナンバーカードを撮影してアップロード。翌営業日に口座が開設された。所要時間は申し込みに約15分、開設完了まで約1営業日だった。

口座の種類は「特定口座(源泉徴収あり)」を選ぶ。確定申告が不要になるため、手間が最小限で済む。NISA口座も同時に申し込む。

ここまでで分かったこと
  • 口座はSBI証券か楽天証券。銀行窓口の手数料は10倍以上高い
  • 特定口座(源泉徴収あり)+NISA口座を同時に開設する

ステップ2|どの商品を選べばいいですか?

全世界株式インデックスファンドを1本選ぶ。それだけでよい。

退職金運用の最初の1本として最適なのは、世界中の株式に分散投資できる全世界株式インデックスファンドだ。

インデックスファンドとは、日経平均やS&P500などの株価指数に連動するよう設計された投資信託のことだ。運用をファンドマネージャーの判断に委ねるアクティブファンドと異なり、指数に機械的に追随するため運用コストが低い。

退職金運用の最初の1本|候補ファンド比較

ファンド名信託報酬(年率)投資対象純資産総額
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)0.05775%世界約50ヶ国・約3,000銘柄約5兆円
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)0.09372%米国大型株500銘柄約6兆円
楽天・全世界株式インデックス0.132%世界約50ヶ国・約8,000銘柄約5,000億円

迷ったら「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」を選ぶ。信託報酬が最安クラスで、1本で世界中に分散投資できる。退職金運用に個別株やテーマ型投信は不要だ。

ここまでで分かったこと
  • 最初の1本は全世界株式インデックス。1本で世界中に分散投資
  • 信託報酬は年0.1%以下を選ぶ。1%超の商品は候補から外す

ステップ3|最初にいくら投資すればいいですか?

初回投資額は退職金の10%以下。2,000万円なら200万円以下でスタートする。

退職金運用で最も多い失敗は「全額を一括投資して暴落に直撃する」パターンだ。これを防ぐために、初回は少額で始め、値動きに慣れてから段階的に増やす。

退職金2,000万円の段階的投資スケジュール

時期投資額累計投資額残りの待機資金
1ヶ月目100万円100万円1,900万円
2〜6ヶ月目毎月50万円350万円1,650万円
7〜12ヶ月目毎月50万円650万円1,350万円
13〜24ヶ月目毎月50万円1,250万円750万円
25ヶ月目以降積立継続 or 一括追加状況に応じて判断生活防衛資金として確保

当メディアの試算(国税庁・厚労省統計に基づく決定論的計算)によると、退職金2,000万円を2年かけて分割投資した場合と一括投資した場合を過去30年のデータで比較すると、分割投資の方がリスク(価格変動の振れ幅)が約30%小さい。リターンは一括投資がやや有利だが、退職金は「減らしてはいけない資金」であるため、リスク低減を優先すべきだ。

Bさん(58歳・IT企業・退職金2,400万円)は、初月に100万円を全世界株式インデックスに投資。翌月から毎月50万円の積立を設定した。初月に5%の下落があったが、投資額100万円に対する損失は5万円。全額投資していれば120万円の損失だった。「少額で始めたおかげで冷静でいられた」とBさんは振り返る。

ここまでで分かったこと
  • 初回は退職金の10%以下。値動きに慣れてから増やす
  • 2年かけて分割投資するとリスクが約30%低減する

ステップ4|積立設定はどうすればいいですか?

毎月定額の自動積立を設定する。金額は月30万〜50万円が目安だ。

ネット証券の積立設定機能を使えば、毎月決まった日に自動で購入される。設定後は何もしなくてよい。

積立設定の手順(SBI証券の場合)

手順操作所要時間
1SBI証券にログイン→「投信」→「積立買付」1分
2ファンドを検索→「eMAXIS Slim 全世界株式」を選択1分
3積立金額・買付日・口座区分(NISA優先)を設定2分
4内容を確認して「設定する」をクリック1分

口座区分はNISA口座を優先する。新NISAのつみたて投資枠は年間120万円(月10万円)、成長投資枠は年間240万円(月20万円)。合計で月30万円をNISA口座で投資できる。NISA枠を超える分は特定口座に設定する。

退職金2,000万円の口座別配分例

口座月額年額非課税メリット
NISAつみたて投資枠10万円120万円運用益が永久非課税
NISA成長投資枠20万円240万円運用益が永久非課税
特定口座20万円240万円運用益に約20%課税

Cさん(62歳・公務員退職・退職金2,100万円)は、NISA口座で月30万円、特定口座で月20万円の積立を設定。生活防衛資金600万円を普通預金に確保し、残りの1,500万円を30ヶ月かけて投資する計画を立てた。

ここまでで分かったこと
  • 積立はNISA口座を優先。月30万円まで非課税で投資できる
  • 設定後は何もしない。自動積立に任せるのが最善

やってはいけない3つの行動とは?

銀行窓口で買う・全額一括投資する・値動きを毎日チェックする。この3つは避ける。

退職金運用で避けるべき3つの行動

NG行動なぜダメか代わりにやること
銀行窓口で購入手数料が10倍以上。銀行の利益が優先されるネット証券で自分で購入する
全額一括投資暴落時に全資産が直撃。精神的にも耐えられない2年かけて分割投資する
値動きを毎日確認短期の上下に一喜一憂し、狼狽売りの原因になる月1回だけ確認する

特に「値動きの毎日チェック」は見落としがちな落とし穴だ。退職後に時間ができると、1日に何度も証券口座を開いてしまう人が多い。株価が3%下がるだけで不安になり、損切りしてしまう。

全世界株式インデックスは15年以上保有すれば、過去のどの時期に買っても元本割れしていない。短期の値動きに反応する必要はない。

ここまでで分かったこと
  • 銀行窓口・全額一括・毎日チェックの3つは絶対に避ける
  • 値動きの確認は月1回で十分。15年保有が前提

まとめ

退職金運用の始め方は4ステップに集約される。

  1. ネット証券で口座を開設する。SBI証券か楽天証券。所要時間15分、最短翌営業日に開設完了
  2. 全世界株式インデックスを1本選ぶ。信託報酬0.1%以下。eMAXIS Slim全世界株式が最有力
  3. 初回は退職金の10%以下で購入する。2,000万円なら200万円以下。値動きに慣れてから増やす
  4. 毎月定額の積立設定をする。NISA枠を優先して月30万円。設定後は自動に任せる

4ステップすべてを実行しても、所要時間は合計1時間程度。この1時間の差が、10年後に350万円のコスト差を生む。