退職金500万円を全額定期預金に入れた場合、15年後の利息は約11万円。一方、200万円をNISAで年利3%運用すれば、その200万円だけで約111万円の利益を生む。しかも非課税だ。
「500万円しかないから運用しても意味がない」——この思い込みが、15年後の100万円の差を生む。500万円だからこそ、1円も無駄にしない運用戦略が必要だ。
退職金500万円はどう配分すればいい?
退職金500万円は「生活防衛200万円+安全運用100万円+NISA200万円」の3分割が基本だ。
退職金500万円は大卒・大企業の平均退職金(約2,000万円)と比べると少ないが、中小企業の勤続20〜24年の平均退職金(約600万円)とほぼ同水準だ。決して異常な金額ではない。ただし、2,000万円の人と比べて「失敗できる余地」が極端に小さい。だからこそ守りを固めた配分が必要だ。
退職金500万円の配分モデル
| 資金区分 | 金額 | 配分比率 | 運用先 | 期待利回り |
|---|---|---|---|---|
| 生活防衛資金 | 200万円 | 40% | 定期預金 | 0.3% |
| 安全運用枠 | 100万円 | 20% | 個人向け国債(変動10年) | 0.72% |
| NISA運用枠 | 200万円 | 40% | バランス型インデックス投信 | 2〜4% |
| 合計 | 500万円 | 100% | — | 約1.6%(加重平均) |
生活防衛資金とは、収入が途絶えた場合に生活を維持するための緊急資金のことだ。500万円の退職金では200万円(月の生活費20万円×10ヶ月分)を最低ラインとして確保する。この200万円は何があっても動かさない「聖域」だ。
- 500万円は40%を生活防衛資金に確保。守りを最優先
- 運用に回すのは300万円まで。そのうちNISA枠は200万円
安全運用100万円はどこに置く?
安全運用の100万円は個人向け国債(変動10年)に置く。定期預金より利回りが高く、元本は国が保証する。
個人向け国債(変動10年)は2026年7月発行分で年利0.72%。100万円を預けると年間約7,200円の利息だ。定期預金(年0.25%)の約2,500円と比べて約3倍。金額は小さいが、500万円の運用では「少額の差」を積み重ねることが重要だ。
1年経過後に中途換金できるため、急な出費にも対応可能だ。ただし中途換金時は直前2回分の利息が差し引かれる。それでも元本は100%戻る。
Aさん(58歳・中小小売業退職・退職金480万円)は退職金480万円のうち、200万円を定期預金、100万円を国債に配分。残り180万円をNISAに回した。「国債の年7,200円は小さく見えるが、10年で72,000円。定期預金との差額は約47,000円。500万円の運用では無視できない」とAさんは話す。
- 国債は安全運用の最適解。元本保証で定期預金の約3倍の利息
- 1年経過後に中途換金可能。急な出費にも対応できる
NISA200万円で年金+αの収入を作る方法は?
NISA200万円は「増やす」よりも「年金の不足分を補填する資金」として運用する。
500万円の退職金でNISAに回せる金額は最大200万円。2,000万円の人と比べて運用額が小さいため、全世界株式100%ではなくバランス型インデックス投信(株式50%:債券50%)を選ぶ。値動きを抑えて「取り崩しても安心な運用」を重視する。
NISA200万円の投入方法は、つみたて投資枠を使って月約16.7万円×12ヶ月で完了させるのが効率的だ。年間投資枠120万円(つみたて枠)に収まるため、1年で投入完了する。
当メディアの試算(国税庁・厚労省統計に基づく決定論的計算)によると、200万円をバランス型投信で年利2.5%・15年運用した場合、約290万円に成長する。運用益90万円は全額非課税だ。
NISA200万円の運用シミュレーション
| 運用利回り | 10年後 | 15年後 | 20年後 | 非課税メリット(15年) |
|---|---|---|---|---|
| 年1.5% | 約232万円 | 約267万円 | 約307万円 | 約14万円 |
| 年2.5% | 約256万円 | 約290万円 | 約328万円 | 約18万円 |
| 年3.5% | 約282万円 | 約334万円 | 約399万円 | 約27万円 |
- 500万円のNISA運用はバランス型投信で値動きを抑える
- 200万円をつみたて投資枠で1年間投入。年利2.5%で15年後約290万円
500万円を取り崩すと何年もつ?
月2万円ずつ取り崩す場合、運用なしで約20年10ヶ月。年利2%で運用しながらなら約26年もつ。
退職金500万円を「年金の補填」として使う場合のシミュレーションを見よう。年金だけでは不足する月額を退職金から補う想定だ。
退職金500万円の取り崩しシミュレーション
| 月額取り崩し | 運用なし | 年利1% | 年利2% |
|---|---|---|---|
| 月1万円 | 約41年8ヶ月 | 約50年 | 約69年 |
| 月1.5万円 | 約27年9ヶ月 | 約32年 | 約37年 |
| 月2万円 | 約20年10ヶ月 | 約23年 | 約26年 |
| 月3万円 | 約13年11ヶ月 | 約15年 | 約16年 |
65歳から月2万円を取り崩す場合、運用なしだと85歳で底をつく。年利2%で運用しながらなら91歳まで持続する。この6年の差は、500万円の退職金では極めて大きい。
Bさん(63歳・飲食業退職・退職金520万円)のケースでは、200万円を定期預金、100万円を国債、220万円をNISAに配分。65歳から月1.5万円を定期預金から取り崩し始め、NISA部分は70歳まで運用を継続する計画だ。70歳時点でNISAの220万円は約254万円に成長している見込みで、その後の取り崩しの原資になる。
- 月2万円取り崩しなら年利2%運用で91歳まで持続
- 安全資産から先に取り崩し、NISA部分は可能な限り運用を継続
退職金500万円の3つの運用パターンは?
退職金500万円の運用は、リスク許容度に応じて3パターンから選ぶ。
退職金500万円の3運用パターン
| パターン | 定期預金 | 国債 | NISA | 期待リターン(年) | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|---|
| 安全重視型 | 300万円(60%) | 100万円(20%) | 100万円(20%) | 約0.8% | 絶対に減らしたくない人 |
| バランス型 | 200万円(40%) | 100万円(20%) | 200万円(40%) | 約1.6% | 少し増やしたい人 |
| 積極型 | 150万円(30%) | 50万円(10%) | 300万円(60%) | 約2.4% | 15年以上使わない余裕がある人 |
安全重視型は退職金500万円が唯一の老後資金で、他の貯蓄がほとんどない場合に選ぶ。リターンは低いが元本割れリスクを最小化する。
バランス型は年金に加えて退職金以外の貯蓄が200〜500万円ある場合の標準配分だ。守りと攻めのバランスが取れている。
積極型は退職金以外に500万円以上の貯蓄があり、退職金の一部を15年以上触らずに運用できる場合に選ぶ。ただし最大で30%程度の一時的な下落を受け入れる覚悟が必要だ。
Cさん(60歳・事務職退職・退職金500万円)は退職金以外に300万円の貯蓄があったため、バランス型を選択。「退職金だけで見ると心もとないが、貯蓄と合わせれば800万円。生活防衛資金を500万円確保しつつ、300万円を運用に回せる計算になった」とCさん。
- 3パターンから自分の貯蓄状況に合ったものを選ぶ
- 退職金以外の貯蓄額で選べるパターンが変わる
500万円でやってはいけない運用は?
退職金500万円は余裕が小さい分、「やってはいけない運用」を1つでもやると致命傷になる。
退職金500万円でやってはいけない運用
| NG行動 | なぜ危険か | 代わりにやるべきこと |
|---|---|---|
| 全額を投資に回す | 生活防衛資金ゼロで急な出費に対応不能 | 最低200万円は定期預金に確保 |
| 個別株・FXに挑戦 | 500万円が半減するリスク | インデックス投信で分散 |
| 高コストの投信を購入 | 信託報酬1%で年5万円のコスト | 信託報酬0.2%以下の商品を選ぶ |
| 退職金専用定期の抱き合わせ | 投信手数料で利息以上の損失 | 通常の定期預金+自分で投信購入 |
| 保険に300万円以上投入 | 流動性を失い解約で元本割れ | 保険は最大100万円まで |
500万円の退職金で最も避けるべきは「大きく増やそうとする」ことだ。500万円を年利2%で15年堅実に運用すれば約580万円。この80万円の差が、月2万円の取り崩しで3年分の延命になる。派手なリターンは不要だ。
- 500万円は1つのNG行動で致命傷になる。守りを最優先
- 「大きく増やそう」とせず、年利2%の堅実運用で15年後に+80万円
まとめ:500万円は「少ない」ではなく「工夫次第」
退職金500万円の運用は、3つのステップで進める。
- 生活防衛資金200万円を定期預金で確保する。これが退職金運用の土台
- 安全運用100万円を個人向け国債に置く。定期預金の3倍の利息を確保
- 残り200万円をNISAでバランス型投信に投入する。年利2.5%で15年後に約290万円
500万円を「少ない」と嘆く必要はない。年金月15万円に退職金からの取り崩し月2万円を加えれば月17万円。運用しながら取り崩せば91歳まで持続する。退職金の手取りを最大化するのは金額の大小ではなく、配分の工夫だ。