無料のFP相談で勧められた外貨建て保険に1,000万円を投入し、3年で失った金額は約180万円。相談は「無料」だったが、代償は180万円だった。

FP相談には「無料」と「有料」がある。この2つは名前が同じだけで、ビジネスモデルも提案内容もまったく違う。退職金という人生最大級の資金を相談する前に、この違いを知っておく必要がある。

無料FPと有料FPは何が違うのか?

無料FPは保険・投信の販売手数料で稼ぐ。有料FPは相談料で稼ぐ。収益構造が違うから、提案内容も変わる。

無料FP相談の多くは、保険代理店や証券会社に所属するFPが担当する。彼らの収入は相談者が金融商品を購入したときの販売手数料だ。外貨建て保険なら購入額の3〜7%、投資信託なら購入額の1〜3%が手数料として入る。退職金1,000万円の外貨建て保険を販売すれば、30万〜70万円がFP側の収入になる。

一方、有料FPは相談料が収入源だ。金融商品を販売しないため、「この商品は手数料が高いからやめましょう」と言える。

FP(ファイナンシャルプランナー)とは、家計管理・資産運用・保険・税制・年金・相続などの幅広い知識を持ち、個人の資金計画を総合的にアドバイスする専門家のこと。国家資格(FP技能士)と民間資格(CFP・AFP)がある。

無料FP vs 有料FPの比較

項目無料FP有料FP
費用0円1時間5,000〜2万円
収入源商品の販売手数料相談料
商品販売あり(それが目的)なし
提案の中立性販売寄り中立
所属先保険代理店・証券会社独立系FP事務所
資格FP技能士2〜3級が多いCFP・1級FP技能士が多い
ここまでで分かったこと
  • 無料FPの収入 = 商品販売手数料。相談は無料でも商品にコストが乗る
  • 有料FPは相談料が収入。商品を売らないから中立的な助言ができる

無料FP相談の「提案パターン」はどうなっている?

無料FPの提案は保険・投信・ファンドラップの3パターンにほぼ集約される。なぜなら、この3つが販売手数料の高い商品だからだ。

パターン1は外貨建て一時払い保険。「退職金を一括で預けて年利3%」という提案が典型だ。しかし為替手数料・保険関係費を含む実質コストは年2〜3%。10年以内の解約で解約控除がかかり、元本割れする。

パターン2はテーマ型投信。「今はAI関連が伸びている」「直近1年で+30%」という営業トーク。しかしテーマ型投信の信託報酬は年1.0〜1.8%と高コストで、テーマの寿命は3〜5年だ。

パターン3はファンドラップ。「プロにお任せ」という提案だが、運用手数料は年1.0〜1.5%。さらに投信の信託報酬も別途かかるため、合計コストは年2〜3%。退職金1,000万円なら毎年20万〜30万円がコストとして消える。

Aさん(61歳・商社退職・退職金2,300万円)は無料FP相談で外貨建て保険800万円+ファンドラップ500万円を契約した。2年後に資金が必要になり解約したところ、外貨建て保険は為替差損と解約控除で約100万円減、ファンドラップは手数料控除後の実質リターンがマイナス。合計約150万円を失った。

ここまでで分かったこと
  • 無料FPの提案は外貨建て保険・テーマ型投信・ファンドラップの3パターン
  • いずれも実質コスト年2〜3%。退職金1,000万円なら年20〜30万円がコスト

有料FPはどう選べばいい?

有料FPを選ぶ基準は「CFP資格保有」「金融商品の販売をしない」「退職金相談の実績がある」の3つだ。

CFP(Certified Financial Planner)はFP資格の最上位で、国際的に認められた資格だ。日本FP協会のウェブサイトで、地域やテーマ(退職金・年金・相続など)を指定してCFP認定者を検索できる。

注意すべきは「有料FP」を名乗りながら商品販売もしているケースだ。相談料を安く設定し、実際は保険や投信の販売手数料で稼ぐ「ハイブリッド型」が存在する。相談前に「金融商品の販売は行いますか?」と直接確認する。

有料FPの選び方チェックリスト

確認項目OKNG
資格CFP / 1級FP技能士FP技能士3級のみ
商品販売なし(相談料のみ)保険・投信も販売
料金体系明示(1時間○円)「まずは無料で」
退職金相談の実績年間10件以上実績不明
契約の強制なし当日契約を促される
ここまでで分かったこと
  • CFP資格+商品販売なし+退職金相談の実績。この3つで選ぶ
  • 「有料」でも商品販売するハイブリッド型に注意

FP相談の前に準備すべき5つの数字とは?

FP相談の質は、相談者の準備で決まる。退職金額・勤続年数・年金見込額・月間生活費・保有資産の5つを事前に整理しておく。

この5つの数字があれば、FPは初回相談で具体的なシミュレーションが組める。数字がないと「まず数字を調べてきてください」で終わり、2回目以降の追加費用が発生する。

当メディアの試算(国税庁・厚労省統計に基づく決定論的計算)によると、勤続35年・退職金2,000万円の場合、退職所得控除は1,850万円。課税対象は(2,000万円−1,850万円)×1/2=75万円。税額は約7.5万円。この計算を事前にできていれば、FP相談は「手取り額をどう配分するか」という本題からスタートできる。

FP相談前に準備すべき5つの数字

項目確認方法なぜ必要か
退職金額(税引前)会社の退職金規程or人事部手取り計算のベース
勤続年数入社日から計算退職所得控除額の算出に必須
年金見込額(月額)ねんきんネットで確認退職後の収入の柱を把握
月間生活費直近3ヶ月の家計簿or通帳取り崩し額の設計に必須
保有資産(預金・投信・保険)通帳・証券口座・保険証券退職金以外の資産も含めた全体設計
ここまでで分かったこと
  • 5つの数字を準備すれば、初回相談で具体的なプランが出る
  • 数字なしで相談すると「調べてきてください」で1回分の費用が無駄になる

FP相談で聞くべき3つの質問とは?

FP相談では「手取り最大化の方法」「取り崩し計画」「保険の見直し」の3つを必ず聞く。

質問1:「退職金の手取りを最大化するには?」。退職所得控除の活用、iDeCoの5年ルール、住民税の申告方法など、制度を使い尽くす方法を聞く。FPの力量はこの質問への回答で測れる。

質問2:「月いくらずつ取り崩せば85歳まで持つか?」。退職金+年金+運用利回りを組み合わせたシミュレーションを依頼する。年齢別の取り崩し額と残高推移を表で出してもらう。

質問3:「今の保険は見直すべきか?」。退職後は会社の団体保険を失う。一方、子どもが独立していれば死亡保障は不要。医療保険も高額療養費制度で大半はカバーできる。不要な保険を解約すれば月1〜3万円の支出削減になる。

Bさん(59歳・メーカー勤務・退職金2,100万円)は有料FP相談(費用2万円)で上記3つを質問。結果、iDeCoの5年ルール活用で手取りが約30万円増加、月の保険料を2.5万円削減(年間30万円)できた。2万円の相談料に対して年間60万円の改善。初月で30倍のリターンだ。

ここまでで分かったこと
  • 手取り最大化・取り崩し計画・保険見直しの3つを必ず聞く
  • 有料FP相談2万円で年間60万円改善した事例あり

まとめ:FP相談は「有料を1回」が最もコスパが高い

退職金のFP相談で最も損をするのは「無料相談で勧められた商品をそのまま買う」こと。最もコスパが高いのは「有料FPに1回相談し、自分で実行する」ことだ。

やるべきことは3つ。

  1. 5つの数字を準備してから相談に行く
  2. CFP資格保有+商品販売なしの有料FPを選ぶ
  3. 手取り最大化・取り崩し計画・保険見直しの3点を聞く

退職金2,000万円に対して、FP相談料2万円はわずか0.1%。この0.1%の投資で、残りの99.9%の使い方が変わる。