退職金2,000万円の使い道を誰に相談するか。この選択を間違えると、相談先の手数料だけで100万円以上を失う可能性がある。
「銀行なら安心」「FPに頼めば大丈夫」——どちらも半分正解で半分不正解だ。相談先には「得意分野」と「利益相反」がある。これを知らずに相談すると、相手のビジネスに都合の良い答えが返ってくる。
退職金の相談先は何種類ありますか?
退職金の相談先は大きく分けて銀行・証券会社・FP(独立系)・税理士・社労士の5つだ。
それぞれ得意分野が異なる。退職金の課題は「税金」「運用」「年金との調整」「生活設計」の4つに分かれるため、1つの相談先ですべてを解決するのは難しい。
退職金の相談先と得意分野
| 相談先 | 得意分野 | 費用 | 利益相反リスク |
|---|---|---|---|
| 銀行・証券会社 | 金融商品の提案 | 無料(商品手数料が実質費用) | 高い |
| FP(独立系) | ライフプラン全体の設計 | 1時間5,000〜20,000円 | 低い |
| FP(銀行・保険所属) | 商品提案を伴うプラン設計 | 無料 | 高い |
| 税理士 | 退職所得の税額計算・確定申告 | 相談1万円〜、申告5〜15万円 | 低い |
| 社労士 | 年金の受給計算・繰下げ判断 | 相談5,000〜10,000円 | 低い |
ここで重要なのは利益相反の有無だ。利益相反とは、相談者の利益と相談先の利益が対立する構造のことだ。銀行は手数料の高い商品を売るほど利益が出る。「あなたにとって最適な商品」と「銀行にとって利益の出る商品」が一致するとは限らない。
- 相談先は銀行・FP・税理士・社労士の4種類が主流
- 利益相反の構造を理解して相談先を選ぶ
銀行に退職金の相談をすると何が起きますか?
銀行に退職金を預けると、数日〜数週間で「退職金プランのご紹介」の電話がかかってくる。相談は無料で丁寧だが、出口は自社商品の購入だ。
Cさん(61歳・地方公務員・退職金2,100万円)の実例を紹介する。
Cさんはメインバンクの窓口で退職金の運用を相談した。提案されたのは以下のプラン。
- 退職金定期預金1,050万円(年利6%・3ヶ月)
- 投資信託1,050万円(バランス型・購入手数料2.2%・信託報酬1.32%)
窓口の担当者は「バランス型なのでリスクは抑えられます」と説明した。しかしCさんが持ち帰って調べたところ、同じ投資対象のインデックスファンドがネット証券で購入手数料0円・信託報酬0.14%で買えることがわかった。
10年保有した場合のコスト差。
- 銀行窓口: 購入手数料23.1万円 + 信託報酬138.6万円 = 合計161.7万円
- ネット証券: 購入手数料0円 + 信託報酬14.7万円 = 合計14.7万円
差額は約147万円。銀行の無料相談の「本当の費用」は、この手数料差だ。
- 銀行の無料相談は実質的に商品販売の営業活動
- 同じ投資対象でも銀行窓口とネット証券で10年147万円の差
独立系FPと企業所属FPの違いは何ですか?
FP(ファイナンシャルプランナー)には「独立系」と「企業所属」の2種類がある。結論から言えば、退職金の相談は独立系FPを選ぶべきだ。
独立系FP: 特定の金融機関に属さず、相談料(フィー)が収入源。商品販売のインセンティブがないため、中立的なアドバイスが期待できる。
企業所属FP: 銀行・証券会社・保険会社に所属し、自社商品の販売が収入源。FPの資格を持っているが、立場は銀行員と同じだ。
独立系FPを選ぶ際のチェックポイントは3つ。
- 資格: CFP(上級資格)または1級FP技能士を保有しているか
- 報酬体系: 相談料のみ(フィーオンリー)か、商品販売の手数料も受け取っているか
- 退職金の実績: 退職金の受取方法・運用・税金を横断的にアドバイスした実績があるか
「無料相談」をうたうFPは企業所属か保険代理店のケースが多い。相談料を払ってでも、独立系FPに相談した方が結果的にコストは安い。
当メディアの試算(国税庁・厚労省統計に基づく決定論的計算)によると、独立系FPの相談料5万円を払って適切な商品を選んだ場合と、無料相談で手数料の高い商品を購入した場合の10年間の差額は約140万円以上になる。
- 独立系FPはフィー収入型、企業所属FPは商品販売型
- 相談料5万円を払っても10年で140万円以上の差がつく
税金の相談は誰にすべきですか?
退職金の税金に関する相談は税理士の専門領域だ。以下の判断は税理士に依頼するのが最適。
- 退職所得控除の計算: 勤続年数のカウント方法(端数切上げ)、転職がある場合の通算
- 一時金 vs 年金の税負担比較: 退職所得として受け取るか、雑所得として受け取るかで税額が変わる
- 確定申告の要否: 退職所得の受給に関する申告書を提出済みなら原則不要だが、医療費控除やふるさと納税との兼ね合いで必要になる場合がある
- 住民税・国民健康保険への影響: 退職翌年の住民税・国保保険料は前年の所得で決まる
税理士の費用は相談のみなら1回1〜3万円、確定申告の代行は5〜15万円が相場だ。退職金が2,000万円を超えるなら、税理士への相談料は十分にペイする。
退職金の相談内容と最適な相談先
| 相談内容 | 最適な相談先 | 費用目安 |
|---|---|---|
| 退職金の税金計算・確定申告 | 税理士 | 1〜15万円 |
| 一時金vs年金の受取判断 | 税理士 + 独立系FP | 3〜10万円 |
| 年金の繰下げ・在職老齢年金 | 社労士 | 0.5〜1万円 |
| ライフプラン全体の設計 | 独立系FP(CFP) | 3〜10万円 |
| 金融商品の購入 | ネット証券(自分で選ぶ) | 0円 |
- 税金の相談は税理士、年金の相談は社労士が最適
- 退職金2,000万円超なら税理士への相談料は十分にペイする
まとめ:退職金の相談先を間違えないために
退職金の相談先は「何を相談するか」で決まる。税金は税理士、年金は社労士、全体設計は独立系FP。銀行は「商品の提供元」として使い分ける。
押さえるべきポイントは3つ。
- 「無料相談」は利益相反を疑う。無料の対価は商品の手数料で回収される
- FPは独立系を選ぶ。CFPまたは1級FP技能士で、フィーオンリーの報酬体系を確認する
- 税金の判断は税理士に任せる。一時金vs年金の選択は退職前に相談しておく