退職金の手取り額は、自分で計算しなければ正確にはわからない。会社から提示される金額は「額面」であり、そこから所得税と住民税が差し引かれる。

たとえば退職金2,000万円・勤続20年の場合、税金は約142万円。手取りは約1,858万円だ。一方、勤続38年なら税金はゼロ。同じ2,000万円でも、勤続年数で手取りが142万円変わる。

退職金の手取りはどう計算しますか?

退職金の手取りは、退職所得控除を差し引いた金額の1/2に税率を適用して計算する。3ステップで完結する。

ステップ1: 退職所得控除額を算出

退職所得控除額とは、退職金から無条件で差し引ける非課税枠のことだ。勤続年数が長いほど控除額が大きくなる。

  • 勤続20年以下: 40万円 × 勤続年数(最低80万円)
  • 勤続20年超: 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)

勤続年数は1年未満の端数を切り上げる。19年6ヶ月なら20年としてカウントする。

ステップ2: 課税退職所得金額を計算

(退職金 − 退職所得控除額)× 1/2 = 課税退職所得金額

退職所得控除額が退職金を上回る場合、課税退職所得金額はゼロになり、税金はかからない。

ステップ3: 所得税・住民税を計算

課税退職所得金額に所得税の速算表を適用し、住民税(一律10%)を加える。

所得税の速算表(退職所得に適用)

課税退職所得金額税率控除額
195万円以下5%0円
330万円以下10%97,500円
695万円以下20%427,500円
900万円以下23%636,000円
1,800万円以下33%1,536,000円
4,000万円以下40%2,796,000円
4,000万円超45%4,796,000円
ここまでで分かったこと
  • 退職所得控除→1/2課税→速算表の3ステップで計算
  • 勤続年数は1年未満切上げ。端数でも1年分の控除が増える

退職所得控除額の早見表

勤続年数別の退職所得控除額を一覧にする。

勤続年数別の退職所得控除額

勤続年数退職所得控除額控除内で非課税の退職金上限
20年800万円800万円
23年1,010万円1,010万円
25年1,150万円1,150万円
28年1,360万円1,360万円
30年1,500万円1,500万円
33年1,710万円1,710万円
35年1,850万円1,850万円
38年2,060万円2,060万円
40年2,200万円2,200万円

当メディアの試算(国税庁・厚労省統計に基づく決定論的計算)によると、厚生労働省の統計で大卒・勤続35年以上の退職金平均は約2,048万円。退職所得控除額1,850万円を差し引くと、課税対象は198万円の1/2=99万円。税額は約15万円で、手取り率は99.3%になる。

ここまでで分かったこと
  • 勤続38年なら控除額2,060万円。退職金2,000万円以下は全額非課税
  • 大卒・勤続35年以上の平均退職金2,048万円の手取り率は約99%

退職金の手取り早見表(500万〜5,000万円×勤続年数別)

退職金額と勤続年数の組み合わせ別に、手取り額を早見表にまとめる。所得税(復興特別所得税含む)と住民税を差し引いた金額だ。

退職金の手取り早見表(勤続20年)退職所得控除: 800万円

退職金課税退職所得税額合計手取り手取り率
500万円0円0円500万円100%
800万円0円0円800万円100%
1,000万円100万円約15万円約985万円98.5%
1,500万円350万円約55万円約1,445万円96.3%
2,000万円600万円約142万円約1,858万円92.9%
2,500万円850万円約209万円約2,291万円91.6%
3,000万円1,100万円約289万円約2,711万円90.4%
4,000万円1,600万円約475万円約3,525万円88.1%
5,000万円2,100万円約672万円約4,328万円86.6%

退職金の手取り早見表(勤続25年)退職所得控除: 1,150万円

退職金課税退職所得税額合計手取り手取り率
500万円0円0円500万円100%
1,000万円0円0円1,000万円100%
1,500万円175万円約27万円約1,473万円98.2%
2,000万円425万円約68万円約1,932万円96.6%
2,500万円675万円約98万円約2,402万円96.1%
3,000万円925万円約241万円約2,759万円92.0%
4,000万円1,425万円約406万円約3,594万円89.9%
5,000万円1,925万円約601万円約4,399万円88.0%

退職金の手取り早見表(勤続30年)退職所得控除: 1,500万円

退職金課税退職所得税額合計手取り手取り率
500万円0円0円500万円100%
1,000万円0円0円1,000万円100%
1,500万円0円0円1,500万円100%
2,000万円250万円約38万円約1,962万円98.1%
2,500万円500万円約80万円約2,420万円96.8%
3,000万円750万円約133万円約2,867万円95.6%
4,000万円1,250万円約349万円約3,651万円91.3%
5,000万円1,750万円約530万円約4,470万円89.4%

退職金の手取り早見表(勤続35年)退職所得控除: 1,850万円

退職金課税退職所得税額合計手取り手取り率
500万円0円0円500万円100%
1,000万円0円0円1,000万円100%
1,500万円0円0円1,500万円100%
2,000万円75万円約11万円約1,989万円99.5%
2,500万円325万円約50万円約2,450万円98.0%
3,000万円575万円約95万円約2,905万円96.8%
4,000万円1,075万円約280万円約3,720万円93.0%
5,000万円1,575万円約459万円約4,541万円90.8%

退職金の手取り早見表(勤続38年)退職所得控除: 2,060万円

退職金課税退職所得税額合計手取り手取り率
500万円0円0円500万円100%
1,000万円0円0円1,000万円100%
1,500万円0円0円1,500万円100%
2,000万円0円0円2,000万円100%
2,500万円220万円約34万円約2,466万円98.6%
3,000万円470万円約75万円約2,925万円97.5%
4,000万円970万円約246万円約3,754万円93.9%
5,000万円1,470万円約416万円約4,584万円91.7%
ここまでで分かったこと
  • 退職所得控除内なら手取り率100%(税金ゼロ)
  • 退職金5,000万円でも手取り率は87〜92%。退職所得の税負担は軽い

手取り計算の具体例

Eさん(58歳・製造業・退職金2,400万円・勤続33年)のケースで計算する。

ステップ1: 退職所得控除額

800万円 + 70万円 ×(33年 − 20年)= 800万円 + 910万円 = 1,710万円

ステップ2: 課税退職所得金額

(2,400万円 − 1,710万円)× 1/2 = 345万円

ステップ3: 所得税

345万円 × 20% − 42.75万円 = 26.25万円

復興特別所得税: 26.25万円 × 2.1% = 約0.55万円

所得税合計: 約26.8万円

ステップ4: 住民税

345万円 × 10% = 34.5万円

税額合計: 約61.3万円

手取り: 2,400万円 − 61.3万円 = 約2,339万円(手取り率97.4%)

ここまでで分かったこと
  • 退職金2,400万円・勤続33年の手取りは約2,339万円
  • 手取り率97.4%。退職所得控除が大きいほど手取り率は上がる

早見表に載っていないケースの注意点

以下のケースでは早見表の金額がそのまま適用できない。

  1. 勤続5年以下の役員等: 1/2課税が適用されない。課税退職所得金額が2倍になるため、税負担が大幅に増える
  2. 勤続5年以下の一般従業員(2022年以降): 退職所得控除後の金額が300万円を超える部分は1/2課税の対象外
  3. 前職で退職金を受け取っている場合: 退職所得控除の勤続年数が前職と重複する期間は調整が必要
  4. iDeCoや小規模企業共済の一時金と同時に受け取る場合: 退職所得控除を共有するため、控除枠の配分を検討する必要がある

これらのケースに該当する場合は、税理士に個別の計算を依頼することを推奨する。

まとめ:退職金の手取りを最大化するポイント

退職金の手取りは退職所得控除の大きさで決まる。勤続年数が長いほど控除額が大きく、手取り率が高くなる。

押さえるべきポイントは3つ。

  1. 勤続年数の端数は切り上げ。1日でも多く勤務すれば控除額が70万円増える(20年超の場合)
  2. 退職所得控除内なら税金ゼロ。勤続38年なら2,060万円まで全額手取り
  3. iDeCoや前職退職金がある場合は控除枠の調整が必要。税理士に相談する