退職金2,000万円を銀行に預けようとしたとき、窓口で提示される「年利5.0%」の数字に心が動く。だが、この金利で得られる利息はわずか25万円。しかもそれは3ヶ月限りの話だ。
3ヶ月後、あなたの退職金に適用される金利は年0.1〜0.3%に急降下する。知らずに預けると、1年後の利息は「期待した100万円」ではなく「実際は28万円」になる。
退職金専用定期預金とは何ですか?
退職金専用定期預金とは、退職金の受取者だけが利用できる高金利の定期預金商品だ。通常の定期預金(年0.1〜0.3%)の10〜50倍の金利が設定されている。
ただし、高金利が適用されるのは初回の3ヶ月間(一部6ヶ月)に限られる。満期後は自動的に通常金利に切り替わる。
利用条件は以下のとおり。
- 退職後1〜2年以内の申込(銀行により異なる)
- 退職金の受取を確認できる書類(退職所得の源泉徴収票など)の提出
- 最低預入金額:500万円〜1,000万円が多い
- 原則1人1回限り
- 退職金専用定期預金の高金利は3ヶ月限定
- 利用は退職後1〜2年以内・1回限りが原則
年利5%で3ヶ月預けると利息はいくらですか?
年利5%で3ヶ月預けた場合、2,000万円の利息は約25万円。税引後の手取りは約20万円だ。
「年利5%で2,000万円なら年間100万円の利息」と思いがちだが、適用期間3ヶ月なので利息は4分の1。さらに利息には20.315%の源泉分離課税がかかる。
退職金2,000万円を退職金定期預金に預けた場合の利息
| 年利 | 適用期間 | 税引前利息 | 税引後利息 | 実質年利 |
|---|---|---|---|---|
| 3.0% | 3ヶ月 | 約15.0万円 | 約11.9万円 | 0.60% |
| 5.0% | 3ヶ月 | 約25.0万円 | 約19.9万円 | 1.00% |
| 7.0% | 3ヶ月 | 約35.0万円 | 約27.9万円 | 1.40% |
| 5.0% | 6ヶ月 | 約50.0万円 | 約39.8万円 | 2.00% |
当メディアの試算(国税庁・厚労省統計に基づく決定論的計算)によると、3ヶ月の高金利期間が終わった後に通常金利0.2%で9ヶ月預けた場合、年間の実質利回りは約1.4%にとどまる。「年利5%」という表記から受ける印象とは大きく異なる。
- 年利5%でも3ヶ月なら利息は25万円、税引後約20万円
- 3ヶ月後に通常金利に戻ると実質年利は1%台
投資信託セット型の退職金定期預金は得ですか?
投資信託セット型は見かけの金利が高いが、投信の購入手数料で利息以上のコストが発生するケースがある。
セット型の仕組みはこうだ。退職金の50%を定期預金(年利6〜7%・3ヶ月)、残り50%を指定の投資信託で購入する。定期預金の金利だけ見れば単独型より高い。
しかし投資信託の購入手数料は2〜3%が一般的だ。Aさん(62歳・メーカー勤務・退職金2,400万円)のケースで検証する。
- 定期預金:1,200万円 × 年利7% × 3ヶ月 = 利息21万円(税引後約16.7万円)
- 投資信託:1,200万円 × 購入手数料3% = 手数料36万円
利息16.7万円に対して、手数料36万円。差し引き約19万円のマイナスだ。
さらに投資信託は信託報酬(年0.5〜1.5%)が毎年かかり続ける。基準価額が下落すれば元本割れのリスクもある。
単独型 vs セット型の比較(退職金2,400万円の場合)
| 項目 | 単独型(年利5%・3ヶ月) | セット型(定期7%+投信) |
|---|---|---|
| 定期預金の税引後利息 | 約23.9万円 | 約16.7万円 |
| 投信の購入手数料 | なし | 約36万円 |
| 3ヶ月後の損益 | +23.9万円 | −19.3万円 |
| 投信の信託報酬(年間) | なし | 約6〜18万円 |
- セット型は投信の購入手数料が利息を上回ることがある
- 購入手数料3%で1,200万円購入すると手数料36万円
退職金定期預金を使うべきタイミングは?
退職金定期預金は「運用先を決めるまでの一時待機場所」として使うのが合理的だ。
退職直後は税金の精算、社会保険の切替え、生活費の見直しなど、資金計画が固まるまで時間がかかる。3ヶ月の高金利期間を「考える時間」として活用し、その間に運用方針を決める。
具体的な活用手順は以下のとおり。
- 退職金受取後すぐに単独型の退職金定期預金に全額預入
- 3ヶ月間で生活費・税金・社会保険料の年間支出を算出
- 3年分の生活費は普通預金に確保(流動性枠)
- 残りの資金で長期運用の方針を決める
セット型の投資信託を窓口で勧められても、その場で契約する必要はない。3ヶ月の期間を使い、手数料の安いインデックスファンドを自分で選ぶ方が合理的だ。
- 退職金定期預金は運用先を決めるまでの一時待機場所
- セット型は断り、単独型で3ヶ月の検討時間を確保する
まとめ:退職金定期預金で押さえるべきポイント
退職金定期預金の「年利5%」は3ヶ月限りの数字だ。2,000万円で得られる税引後利息は約20万円。悪い商品ではないが、年利5%の印象とは乖離がある。
押さえるべきポイントは3つ。
- 高金利は3ヶ月限定。実質年利は1%台にとどまる
- セット型の投信手数料は利息を上回るケースがある。単独型を選ぶ
- 退職金定期預金は「仮置き場」。3ヶ月の猶予で長期運用の方針を決める