退職金2,000万円を現金のまま相続すると、相続税の対象は2,000万円。同じ金額を一時払い終身保険に入れておけば、非課税枠で最大1,500万円が課税対象から外れる。差額は数十万〜数百万円の相続税だ。

ただし退職金を保険に入れすぎると、生活資金が不足して本末転倒になる。この記事では、退職金で入るべき保険3選と「入れすぎ」を防ぐ配分の考え方を解説する。

退職金で入る保険おすすめ3選は何か?

退職金で検討すべき保険は一時払い終身保険・掛け捨て医療保険・個人年金保険の3つだ。

一時払い終身保険とは、保険料を一括で支払い、一生涯の死亡保障を確保する保険のこと。退職金の一部を使って加入し、死亡時に保険金として遺族に資産を渡す仕組みだ。

退職金で入る保険おすすめ3選

保険の種類目的保険料の目安メリット注意点
一時払い終身保険(円建て)相続税対策500〜1,500万円(一括)非課税枠で相続税を圧縮解約返戻金は元本割れの期間あり
掛け捨て医療保険入院・手術の備え月2,000〜4,000円少額で先進医療もカバー高額療養費で足りるなら不要
個人年金保険(一時払い)年金の上乗せ300〜500万円(一括)確定年金で取り崩しを自動化利回りは年0.5〜1.0%程度

この3つ以外の保険、特に外貨建て保険・変額保険・投資型保険は退職金では避けるべきだ。実質コストが高く、リスクが退職金運用の目的に合わない。

ここまでで分かったこと
  • おすすめは一時払い終身・掛け捨て医療・個人年金の3つ
  • 外貨建て保険・変額保険は退職金で入るべきではない

一時払い終身保険で相続税をどのくらい減らせるのか?

死亡保険金の非課税枠は「500万円×法定相続人数」。配偶者と子ども2人なら1,500万円が非課税だ。

相続財産が5,000万円(退職金2,000万円+自宅2,000万円+預金1,000万円)のケースで考えよう。基礎控除は3,000万円+600万円×3人=4,800万円。保険なしなら課税対象は200万円。相続税は約20万円だ。

ここで退職金の1,500万円を一時払い終身保険に入れると、死亡保険金1,500万円は全額非課税。課税対象は5,000万円−1,500万円(非課税枠)−4,800万円(基礎控除)=マイナス。相続税はゼロになる。

当メディアの試算(国税庁・厚労省統計に基づく決定論的計算)によると、相続財産6,000万円以上のケースでは、一時払い終身保険の非課税枠を活用することで相続税を50万〜200万円圧縮できる。

一時払い終身保険による相続税圧縮シミュレーション

相続財産法定相続人3人保険なしの税額保険あり(1,500万円)の税額圧縮額
5,000万円基礎控除4,800万円約20万円0円約20万円
6,000万円基礎控除4,800万円約80万円0円約80万円
7,000万円基礎控除4,800万円約175万円約23万円約152万円
8,000万円基礎控除4,800万円約288万円約80万円約208万円

Aさん(62歳・金融機関退職・退職金2,400万円)は相続財産が約7,000万円。一時払い終身保険に1,500万円を投入し、相続税を約152万円圧縮した。保険料1,500万円に対して、死亡保険金は1,500万円+α(保険会社により若干の上乗せあり)。元本はほぼ維持しながら、相続税だけが減る仕組みだ。

ここまでで分かったこと
  • 非課税枠 = 500万円 × 法定相続人数。3人なら1,500万円
  • 相続財産6,000万円以上なら一時払い終身保険で数十万〜200万円の税圧縮

退職後に本当に必要な保険はどれか?

退職後に必要な保険は「死亡保険(相続対策用のみ)」と「先進医療特約付き医療保険」の2つだけだ。

子どもが独立していれば、高額な死亡保障は不要だ。在職中に月1万円の生命保険を払っていた人も、退職後は解約して問題ない。遺族の生活保障が目的の保険は、子どもの独立とともに役目を終えている。

医療保険も、高額療養費制度があるため大半の治療費は自己負担月5〜9万円で済む。70歳以上なら月額上限はさらに下がる。ただし先進医療(重粒子線治療など300万円前後)は公的保険の対象外のため、先進医療特約付きの掛け捨て医療保険(月2,000〜3,000円)で備える選択肢がある。

退職後の保険見直しチェックリスト

保険の種類在職中退職後判断基準
死亡保険(掛け捨て)必要(遺族保障)不要子ども独立で保障不要
死亡保険(終身・相続用)検討検討相続財産が基礎控除超なら有効
医療保険加入中が多い見直し貯蓄500万円以上なら不要
がん保険加入中が多い見直し高額療養費で大半カバー可
個人年金保険検討検討年金の上乗せが必要なら加入

Bさん(60歳・公務員退職・退職金2,000万円)は退職を機に保険を全面見直し。死亡保険(月8,000円)・医療保険(月5,000円)・がん保険(月3,000円)を解約し、一時払い終身保険1,000万円(相続用)と先進医療特約付き医療保険(月2,500円)に切り替え。月の保険料は16,000円から2,500円に下がり、年間162,000円を削減した。

ここまでで分かったこと
  • 子ども独立後は高額な死亡保障は不要。相続用の終身保険だけ残す
  • 保険見直しで年間10万〜16万円の支出削減が可能

退職金を保険に入れすぎるとどうなる?

退職金の50%以上を保険に投入すると、生活資金が不足して解約→元本割れの悪循環に陥る。

一時払い終身保険は「長期で保有する」前提の商品だ。契約から5〜10年以内に解約すると、解約返戻金が払込保険料を下回る。つまり元本割れだ。

Cさん(63歳・製造業退職・退職金1,800万円)は銀行窓口で勧められ、一時払い終身保険に1,200万円、個人年金保険に400万円を投入。手元に残ったのは200万円だけだった。2年後に自宅のリフォーム費用300万円が必要になり、一時払い終身保険を一部解約。解約控除で約50万円を失った。

保険に入れる上限の目安は退職金の30%まで。2,000万円なら600万円だ。生活防衛資金(生活費2〜3年分)と運用資金を確保した「残り」で保険を検討する。

退職金2,000万円の保険配分の目安

用途金額割合
生活防衛資金(定期預金)600〜900万円30〜45%
運用資金(国債・投信)600〜800万円30〜40%
保険(一時払い終身等)300〜600万円15〜30%
予備費(リフォーム・医療等)100〜200万円5〜10%
ここまでで分かったこと
  • 保険に入れるのは退職金の30%まで。50%超は生活資金不足の原因
  • 一時払い終身は5〜10年以内の解約で元本割れ。流動性が低い

まとめ:退職金で入る保険は「目的」で選ぶ

退職金で入る保険のおすすめは3つだが、全員が3つとも必要なわけではない。目的で選ぶ。

  1. 相続税を減らしたい → 一時払い終身保険(非課税枠の範囲内で)
  2. 先進医療に備えたい → 掛け捨て医療保険(月2,000〜3,000円)
  3. 年金の上乗せがほしい → 個人年金保険(利回りを確認して)

保険は「入る」だけでなく「やめる」ことも資産防衛だ。退職を機に不要な保険を整理し、浮いた保険料を生活費や運用に回す。それが退職金の手取りを最大化する第一歩になる。