退職金2,000万円を受け取り、確定申告をしなかった結果、381万円の過大徴収に気づかず3年が経過。還付申告の期限は5年だからまだ間に合うが、知らなければ381万円をそのまま失っていた。

退職金の確定申告は「必要」か「不要」か。答えは1枚の書類を出したかどうかで決まる。

確定申告が不要なのはどんなケースですか?

「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出済みなら、確定申告は原則不要だ。

退職所得の受給に関する申告書とは、退職金受取時に会社に提出する書類で、退職所得控除を適用した正しい税額を源泉徴収してもらうためのものだ。ほとんどの会社では退職手続きの一環として提出を求められる。

この申告書を提出していれば、退職金に対する所得税と住民税は源泉徴収で完結する。退職金だけのために確定申告をする必要はない。

申告書提出の有無による税額の違い(退職金2,000万円・勤続30年)

申告書の提出源泉徴収額適正税額過大徴収額
提出済み約27万円約27万円0円
未提出約408万円約27万円約381万円

申告書を提出していないと、退職金全額に対して20.42%(所得税20%+復興特別所得税0.42%)が源泉徴収される。2,000万円なら約408万円。適正税額27万円との差額381万円は、確定申告しなければ戻ってこない。

ここまでで分かったこと
  • 申告書を提出済みなら退職金の確定申告は原則不要
  • 未提出なら20.42%が源泉徴収。2,000万円で約381万円の過大徴収

還付される3つのパターンとは?

申告書未提出・医療費控除・ふるさと納税の3パターンで確定申告すると税金が還付される。

パターン1: 申告書を出していなかった場合

Aさん(60歳・建設業・退職金1,800万円・勤続35年)は、退職時に申告書の存在を知らず、未提出のまま退職した。退職金1,800万円に対して20.42%の源泉徴収で約368万円が天引きされた。

勤続35年の退職所得控除は1,850万円。退職金1,800万円は控除内に収まるため、本来の税額はゼロだ。確定申告すれば368万円全額が還付される。

パターン2: 退職年に多額の医療費がかかった場合

Bさん(58歳・IT企業・退職金2,400万円・勤続33年)は、退職年に入院手術で医療費が50万円かかった。退職金の申告書は提出済みで、退職所得の税金は適正額が源泉徴収されていた。

しかしBさんには退職月までの給与所得がある。給与所得に対する所得税から医療費控除を適用すると、約8万円の還付が受けられた。退職金は分離課税のため医療費控除の対象外だが、給与所得部分には適用できる。

パターン3: ふるさと納税をした場合

Cさん(59歳・メーカー・退職金2,000万円・勤続30年)は、退職年に10万円のふるさと納税をした。ワンストップ特例を利用するつもりだったが、退職年は確定申告が必要なケース(医療費控除も併用)に該当した。

ワンストップ特例は、確定申告をする場合は無効になる。確定申告にふるさと納税分を含めないと、控除が受けられない。

確定申告で還付される3パターンの還付額目安

パターン対象還付額の目安
申告書未提出退職金全額数十万〜数百万円(勤続年数・退職金額による)
医療費控除給与所得部分1万〜15万円(医療費額による)
ふるさと納税給与所得部分寄付額−2,000円の所得税還付分
ここまでで分かったこと
  • 申告書未提出→確定申告で全額還付の可能性あり
  • 医療費控除・ふるさと納税は給与所得部分に適用

確定申告の手順はどうすればいいですか?

国税庁の確定申告書等作成コーナーで、退職所得と給与所得を入力するだけだ。

必要な書類は以下の4点。

退職金の確定申告に必要な書類

書類入手先備考
退職所得の源泉徴収票退職した会社退職時に発行される
給与所得の源泉徴収票退職した会社退職年の1月〜退職月分
医療費の領収書自分で保管医療費控除を受ける場合のみ
ふるさと納税の受領証明書寄付先の自治体ふるさと納税をした場合のみ

手順は3ステップ。

  1. 国税庁の確定申告書等作成コーナーにアクセス
  2. 「退職所得」の欄に源泉徴収票の金額を入力
  3. 「給与所得」「医療費控除」「寄附金控除」を入力して送信

還付申告は退職金を受け取った翌年の1月1日から5年間受け付けている。通常の確定申告期間(2月16日〜3月15日)でなくても提出できる。

当メディアの試算(国税庁・厚労省統計に基づく決定論的計算)によると、退職金2,000万円・勤続30年で申告書を未提出の場合、確定申告による還付額は約381万円。この手続きに要する時間は約1〜2時間。時給換算で約19万〜38万円に相当する。

ここまでで分かったこと
  • 確定申告書等作成コーナーで入力するだけ。税理士不要
  • 還付申告は5年間有効。期限内に必ず手続きする

申告書を出し忘れたかどうかの確認方法は?

退職所得の源泉徴収票を見れば一目でわかる。

源泉徴収票の「退職所得控除額」の欄に金額が記載されていれば、申告書は提出済みだ。この欄が空欄で、「源泉徴収税額」が退職金の20.42%相当額であれば、未提出だったことがわかる。

Dさん(61歳・商社退職・退職金2,500万円)は、退職から2年後に源泉徴収票を確認し、退職所得控除額が空欄であることに気づいた。確定申告で約470万円の還付を受けた。

源泉徴収票が見つからない場合は、退職した会社に再発行を依頼できる。会社が倒産・閉鎖した場合でも、税務署に相談すれば対応してもらえる。

ここまでで分かったこと
  • 源泉徴収票の「退職所得控除額」欄で提出済みか確認できる
  • 源泉徴収票は退職した会社に再発行を依頼可能

退職年と翌年、住民税の注意点は?

退職金の住民税は源泉徴収で完結するが、退職年の給与に対する住民税は翌年に請求される。

退職金に対する住民税は、会社が退職時に天引き(特別徴収)する。こちらは確定申告の有無に関係なく処理済みだ。

しかし退職年の1月〜退職月までの給与所得に対する住民税は、翌年6月に普通徴収として一括で請求される。退職前は給与から天引き(特別徴収)されていたが、退職後は自分で納付する必要がある。

退職前後の住民税スケジュール

時期対象所得納付方法備考
退職時退職金特別徴収(天引き)確定申告不要
退職翌年6月退職年の給与所得普通徴収(自分で納付)一括or4分割
退職翌々年6月退職翌年の所得普通徴収再就職していれば特別徴収に戻る

Eさん(60歳・金融機関退職・年収700万円で退職)は、退職翌年6月に住民税約28万円の通知を受け取り、準備不足で慌てた。退職前に住民税相当額を確保しておくべきだった。

ここまでで分かったこと
  • 退職金の住民税は退職時に天引き済み。追加納付は不要
  • 退職年の給与に対する住民税は翌年6月に請求。事前に確保する

まとめ

退職金の確定申告について、判断基準は以下のとおりだ。

  1. 申告書を提出済み→原則不要。ただし医療費控除・ふるさと納税がある場合は確定申告で還付が受けられる
  2. 申告書を未提出→確定申告が必須。放置すると数十万〜数百万円の過大徴収が戻ってこない
  3. 還付申告は5年間有効。退職から数年経っていても間に合う

退職金の確定申告で最も重要なのは、「申告書を出したかどうか」を確認することだ。源泉徴収票を1枚確認するだけで、381万円が戻るかどうかが決まる。