退職金2,000万円を現金のまま残して亡くなったAさんの遺族は、相続税として約160万円を支払った。一方、同じ2,000万円のうち1,500万円を一時払い終身保険に入れていたBさんの遺族の相続税は約15万円。差額は145万円。退職金の「置き場所」を変えただけで、遺族の手取りが145万円も変わった。

退職金で相続税対策をする方法は何パターンありますか?

退職金で相続税対策をする方法は、生前贈与・一時払い終身保険・不動産の3パターンが有効だ。

相続税対策とは、将来の相続発生時に課税される財産額を合法的に減らし、遺族の税負担を軽減する取り組みのことだ。

退職金の相続税対策3パターンの比較

対策方法非課税・圧縮効果メリットデメリット
生前贈与(暦年贈与)年110万円×人数分確実に課税財産を減らせる時間がかかる(10年以上推奨)
一時払い終身保険500万円×法定相続人数死亡保険金の非課税枠を活用資金拘束・利回りが低い
不動産購入評価額が時価の60〜80%に圧縮圧縮効果が大きい流動性が低い・管理負担

3つの対策を組み合わせることで、相続税を200〜400万円軽減できる。ただし、退職後の生活資金を確保した上で行うのが大前提だ。

ここまでで分かったこと
  • 相続税対策は生前贈与・保険・不動産の3パターン
  • 退職後の生活資金を確保した上で行うのが大前提

生前贈与で退職金の相続税を減らすにはどうすればよいですか?

暦年贈与(年110万円の非課税枠)を使えば、10年間で1,100万円を非課税で子や孫に移転できる。

Aさん(60歳・退職金2,000万円・配偶者+子2人)のケースで試算する。

ケース1: 暦年贈与を10年間実施

  • 毎年110万円 × 子2人 = 年220万円を贈与
  • 10年間で2,200万円を非課税で移転
  • 相続財産が2,200万円減り、相続税率が下がる

ケース2: 相続時精算課税制度を活用

  • 2,500万円まで贈与税がかからない(相続時に精算)
  • 2024年改正で年110万円の基礎控除が新設
  • 退職金2,000万円の大半を一度に移転可能

暦年贈与と相続時精算課税の比較

制度年間非課税枠累計上限相続税への影響向いているケース
暦年贈与110万円/人上限なし7年以内の贈与は相続財産に加算時間に余裕がある(10年以上)
相続時精算課税110万円+2,500万円2,500万円贈与財産は相続税で精算まとまった金額を早く移転したい

注意点として、暦年贈与は相続開始前7年以内の贈与が相続財産に加算される(2024年改正)。60歳で退職金を受け取ったら、67歳までに贈与を始めないと効果が薄まる。

ここまでで分かったこと
  • 暦年贈与は年110万円×人数×年数で非課税移転
  • 相続前7年以内の贈与は相続財産に加算される点に注意

一時払い終身保険でいくら相続税を減らせますか?

法定相続人が3人なら、死亡保険金1,500万円まで非課税。退職金1,500万円を一時払い終身保険に入れることで、相続税を150〜300万円軽減できる。

Bさん(62歳・退職金2,500万円・配偶者+子2人=法定相続人3人)のケースで計算する。

死亡保険金の非課税枠: 500万円 × 3人 = 1,500万円

対策前(全額現金で相続)

  • 相続財産: 5,000万円(退職金2,500万円+その他2,500万円)
  • 基礎控除: 3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円
  • 課税遺産: 200万円
  • 相続税: 約20万円

対策後(1,500万円を一時払い終身保険に変更)

  • 相続財産: 5,000万円(うち保険金1,500万円は非課税)
  • 課税対象: 5,000万円 − 1,500万円 = 3,500万円
  • 基礎控除: 4,800万円
  • 課税遺産: 0円(基礎控除内)
  • 相続税: 0円

当メディアの試算(国税庁の税額表に基づく決定論的計算)によると、Bさんのケースでは一時払い終身保険に入れるだけで相続税が約20万円→0円になる。相続財産が多いケースほど節税効果は大きくなる。

相続財産規模別・一時払い終身保険の節税効果(法定相続人3人)

相続財産総額対策前の相続税保険1,500万円投入後の相続税節税額
5,000万円約20万円0円約20万円
7,000万円約160万円約35万円約125万円
1億円約630万円約400万円約230万円
1.5億円約1,495万円約1,218万円約277万円
ここまでで分かったこと
  • 法定相続人3人なら死亡保険金1,500万円まで非課税
  • 一時払い終身保険で相続税を20〜277万円軽減できる

退職金で不動産を買うと相続税はどう変わりますか?

不動産の相続税評価額は時価の60〜80%に圧縮されるため、現金を不動産に変えるだけで課税対象が減る。

不動産の相続税評価額は、土地は路線価(時価の約80%)、建物は固定資産税評価額(時価の約60〜70%)で計算される。

Cさん(63歳・退職金3,000万円)が退職金のうち2,000万円で賃貸用ワンルームマンションを購入した場合。

現金2,000万円のまま相続: 評価額 = 2,000万円

不動産に変えて相続: 評価額 = 約1,200〜1,400万円

  • 建物の固定資産税評価額: 時価の約60% = 約720万円(建物1,200万円相当の場合)
  • 土地の路線価評価: 時価の約80% = 約640万円(土地800万円相当の場合)
  • 賃貸用の場合、貸家建付地・借家権の評価減でさらに20%程度圧縮

圧縮効果: 約600〜800万円の課税対象減

ただし不動産にはリスクがある。

  • 流動性リスク: 売りたいときにすぐ売れない
  • 空室リスク: 賃貸収入が途絶える可能性
  • 管理負担: 修繕・入居者対応が必要
  • 価格下落リスク: 不動産価格が下がれば損失

退職後に不動産投資を始めるのは管理負担が大きい。相続税対策としては一時払い終身保険のほうが手間が少なく確実だ。

ここまでで分かったこと
  • 不動産の相続税評価額は時価の60〜80%に圧縮される
  • 退職後の不動産投資は管理負担が大きく、保険のほうが手軽

退職金2,000万円の最適な相続税対策プランはどうなりますか?

退職金2,000万円・法定相続人3人(配偶者+子2人)のDさん(60歳)のケースで最適プランを組む。

ステップ1: 生活資金を確保する

  • 生活防衛資金: 600万円(月25万円×2年分)→ 定期預金
  • 運用資金: 400万円 → NISA

ステップ2: 相続税対策に配分する

  • 一時払い終身保険: 500万円(非課税枠1,500万円のうちの一部)
  • 暦年贈与原資: 500万円(年110万円×2人×約2年分)

退職金2,000万円の相続税対策配分プラン

用途金額配分先相続税効果
生活防衛資金600万円定期預金なし(現金のまま相続財産)
非課税運用400万円NISAなし(運用益は非課税)
相続税対策500万円一時払い終身保険500万円分が非課税
生前贈与原資500万円暦年贈与(年220万円)2年で440万円を非課税移転

このプランで相続財産から約940万円を圧縮できる。相続税率10%なら約94万円、15%なら約141万円の節税だ。

退職金が3,000万円以上あるケースでは、一時払い終身保険を非課税枠いっぱい(1,500万円)まで投入し、暦年贈与の期間を10年以上に延ばすことで、さらに大きな節税効果が得られる。

ここまでで分かったこと
  • 退職金2,000万円のうち約1,000万円を相続税対策に配分
  • 生活防衛資金600万円の確保が最優先

まとめ:退職金の相続税対策は「早く始める」ほど効果が大きい

退職金で相続税対策をするなら、生前贈与・一時払い終身保険・不動産の3パターンを組み合わせる。

  1. 生前贈与: 年110万円×人数を10年以上継続。7年ルールがあるため早期開始が鍵
  2. 一時払い終身保険: 500万円×法定相続人数まで非課税。手間が少なく確実
  3. 不動産: 評価額圧縮効果は大きいが管理負担あり。余裕資金がある場合のみ
  4. 生活防衛資金は必ず確保: 退職金の30%以上を手元に残す

相続税対策は「早く始める」ほど効果が大きい。退職金を受け取ったら、まず生活資金を確保した上で、残りの最適な配分を検討しよう。