退職金2,000万円を全額定期預金に入れた60歳が、80歳になったとき失っている金額は約300万円。利息が少ないのではない。インフレで購買力が蒸発するのだ。

かといって全額を株式に投じれば、暴落1回で老後資金が半減する。「守りながら増やす」配分を間違えると、どちらに転んでも数百万円単位の損失になる。

定年後の資産運用で守り8割・攻め2割とはどういう意味?

定年後の資産運用は、資産の80%を元本確保型、20%をリスク資産に配分するのが基本だ。

定年後の資産運用とは、退職金や貯蓄を取り崩しながら生活する期間において、資産の実質価値を維持・微増させるために行う運用行為を指す。現役時代の「増やす運用」ではなく「守りながら減らさない運用」が目的となる。

守り8割の内訳は「生活防衛資金(定期預金)」と「安全運用資産(個人向け国債など)」だ。攻め2割は全世界株式インデックスなどの投資信託に充てる。

守り8割・攻め2割の配分例(退職金2,000万円)

区分資産クラス金額割合
守り①定期預金(生活防衛資金)600万円30%
守り②個人向け国債(変動10年)600万円30%
守り③個人年金保険・定期預金の上乗せ400万円20%
攻め①全世界株式インデックス投信300万円15%
攻め②バランス型投信(株式40%型)100万円5%
ここまでで分かったこと
  • 守り8割=生活防衛資金+国債+安全資産
  • 攻め2割=インデックス投信で年利2〜4%を狙う

なぜ全額預金ではダメなのか?

年率1.5%のインフレが20年続くと、2,000万円の実質購買力は約1,480万円まで下がる。目減り額は約520万円だ。

2026年時点のメガバンク定期預金金利は年0.125〜0.3%。1,000万円を20年預けても利息は25万〜60万円程度にしかならず、インフレ負けが確定する。

当メディアの試算(国税庁・厚労省統計に基づく決定論的計算)によると、退職金2,000万円を守り8割・攻め2割で運用した場合の期待利回りは年約1.8%。20年後の資産額は約2,860万円となり、インフレ負けを回避できる。

運用方法別・20年後の資産額シミュレーション

運用パターン期待利回り20年後の資産額インフレ後の実質価値
全額定期預金0.2%約2,080万円約1,540万円
守り8割・攻め2割1.8%約2,860万円約2,120万円
守り5割・攻め5割3.0%約3,610万円約2,680万円
全額株式投信5.0%約5,310万円暴落時に半減リスク
ここまでで分かったこと
  • 全額定期預金は「安全」ではなくインフレ負け確定
  • 年利1.5〜2%でインフレを上回れば資産防衛は成功

60歳からのポートフォリオはどう組む?

まず生活費2年分を定期預金で確保する。60歳・月の生活費25万円なら600万円。この資金は絶対に運用に回さない。

総務省「家計調査」令和5年によると、65歳以上・無職夫婦世帯の月間消費支出は約25.1万円。ここに税・社会保険料を加えると月約28万円になる。年金受給までのつなぎ期間(60〜65歳)を考えると、生活防衛資金600万円は最低ラインだ。

残り1,400万円を「守りの安全資産」と「攻めのリスク資産」に配分する。

Aさん(60歳・製造業・退職金2,200万円・年金見込み月15万円)のケースでは、以下の配分を採用した。

  • 定期預金(生活防衛資金): 700万円
  • 個人向け国債(変動10年): 600万円
  • 全世界株式インデックス投信: 400万円(毎月10万円ずつ40ヶ月で分割購入)
  • バランス型投信: 200万円
  • 予備枠(普通預金): 300万円

ポイントは攻め2割の投信を一括ではなく分割で購入すること。退職金を一括投資した直後に暴落すれば、リカバリーに10年以上かかる。

ここまでで分かったこと
  • 生活防衛資金(生活費2年分)を最優先で確保
  • 攻めの投信は分割購入で高値掴みリスクを軽減

年齢別に配分はどう変えるべき?

年齢が上がるほど守りの比率を高め、75歳以降はリスク資産をほぼゼロにするのが基本だ。

年齢別・推奨資産配分

年齢守り(預金+国債)攻め(投信)考え方
60〜64歳75〜80%20〜25%年金開始前。生活防衛資金を厚めに
65〜69歳80〜85%15〜20%年金開始後。攻めを段階的に縮小
70〜74歳85〜90%10〜15%取り崩し期。リスク資産を圧縮
75歳以上95〜100%0〜5%安全最優先。預金と国債に集約

Bさん(68歳・元公務員・退職金1,800万円・年金月18万円)は65歳時点で投信を売却し、国債に振り替えた。理由は「70歳以降に暴落があると精神的に耐えられない」から。資産を守りきることも立派な運用戦略だ。

ここまでで分かったこと
  • 年齢が上がるほど守りの比率を高める
  • 75歳以降はリスク資産ほぼゼロが安全

定年後にやってはいけない運用は何?

退職金を受け取った直後に銀行窓口で勧められた商品を即決購入することが最大の失敗パターンだ。

避けるべき商品は3つ。

  1. 外貨建て一時払い保険: 為替リスクが大きく、10年以内の解約で元本割れする。手数料が5〜8%と高額
  2. テーマ型投資信託: AIやEVなど旬のテーマに集中投資。値動きが激しく退職金運用に不向き
  3. 毎月分配型投資信託: 分配金の大半が元本の取り崩し。見かけの利回りに騙される

Cさん(62歳・退職金2,400万円)は銀行で勧められた外貨建て保険に1,000万円を投入し、2年後に円高で200万円の含み損を抱えた。解約すれば解約控除でさらに50万円減る。10年間の塩漬けを余儀なくされた。

退職金運用の鉄則は「受け取ったら1ヶ月は何も買わない」だ。銀行・証券会社にとって退職金は最大の営業ターゲット。冷静な判断期間を設けることが資産防衛の第一歩になる。

ここまでで分かったこと
  • 外貨建て保険・テーマ型投信・毎月分配型は避ける
  • 退職金受取後1ヶ月は「何も買わない」が鉄則

まとめ:定年後の資産運用は「欲張らない」が最強の戦略

定年後の運用で目指すのは年利1.5〜2.5%。インフレ率を上回れば十分だ。

やるべきことは3つ。

  1. 生活防衛資金600万円を定期預金で確保する
  2. 残りの80%を国債・定期預金、20%をインデックス投信に配分する
  3. 年1回リバランスし、年齢に応じて守りの比率を高める

退職金は人生最大の一括収入。「守り8割・攻め2割」の配分を崩さず、20年かけて取り崩す設計が、老後の手取りを最大化する。