勤続20年で退職した場合、退職金の平均は約1,026万円。手取りを計算せずにそのまま定期預金に入れた人と、退職所得控除を正しく活用して手取りを最大化し、NISAで運用した人では、20年後に約380万円の差が生まれる。手取りの確認を怠ると、税金の払い過ぎで数万円〜数十万円を失うリスクもある。

勤続20年の退職金は平均いくら?

大卒・勤続20〜24年の退職金平均は約1,027万円。高卒では約716万円だ。

勤続年数・学歴別の退職金平均額

学歴勤続20〜24年勤続25〜29年勤続30〜34年勤続35年以上
大卒約1,027万円約1,458万円約1,839万円約2,048万円
高卒約716万円約965万円約1,226万円約1,604万円

勤続20年で退職するのは40代前半〜半ばが多い。定年退職ではなく、転職・早期退職・会社都合の離職が主な理由だ。定年まで働いた人と比べると退職金は約半分。だからこそ、受け取った1,000万円前後を1円でも無駄にしない運用設計が重要になる。

ここまでで分かったこと
  • 大卒・勤続20年の退職金平均は約1,027万円
  • 40代の退職は定年組の約半額。1円も無駄にしない設計が必要

勤続20年の退職金の手取りはいくら?

退職所得控除800万円を使い、退職金1,026万円なら手取りは約1,010万円だ。

退職所得控除とは、退職金にかかる税金を計算する際に差し引ける金額のことを指す。勤続20年以下は「40万円×勤続年数」で計算する。

勤続20年・退職金1,026万円の手取り計算

ステップ計算式金額
①退職所得控除40万円 × 20年800万円
②課税退職所得(1,026万円 − 800万円)× 1/2113万円
③所得税113万円 × 5%約5.7万円
④復興特別所得税5.7万円 × 2.1%約0.1万円
⑤住民税113万円 × 10%約11.3万円
⑥税額合計③+④+⑤約17.1万円
⑦手取り1,026万円 − 17.1万円約1,009万円

手取りを最大化するためのポイントは「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出すること。未提出の場合は退職金全額に20.42%が源泉徴収され、1,026万円なら約210万円が天引きされる。確定申告で還付を受けられるが、還付まで数ヶ月かかり、その間の運用機会を失う。

ここまでで分かったこと
  • 勤続20年・退職金1,026万円の手取りは約1,009万円
  • 「退職所得の受給に関する申告書」を必ず提出する

手取り約1,000万円をどう配分する?

生活防衛資金300万円+安全資産200万円+NISA500万円の「半分守り・半分攻め」モデルが基本だ。

ただし勤続20年での退職は40代が多い。定年退職の60代と違い、再就職する前提かどうかで配分が大きく変わる。

勤続20年・退職金約1,000万円の配分モデル(2パターン)

資金区分再就職あり再就職なし
生活防衛資金(定期預金)200万円400万円
安全運用枠(個人向け国債)100万円200万円
NISA運用枠(全世界株式)700万円400万円
合計1,000万円1,000万円

再就職ありのパターンでは、収入が継続するため生活防衛資金は少なめでよい。代わりにNISAの比率を70%に上げられる。40代なら運用期間が20年以上取れるため、攻めの配分が合理的だ。

再就職なしのパターンでは、次の収入が年金受給開始の65歳まで20年以上ない。生活防衛資金400万円(月20万円 × 20ヶ月)を確保し、残り600万円のうち200万円を国債、400万円をNISAに配分する。

Aさん(42歳・IT企業勤務・勤続20年・退職金1,050万円)のケースを見よう。Aさんは転職を前提に退職した。手取り約1,034万円のうち200万円を定期預金、100万円を個人向け国債、730万円をNISAに配分。NISAは2年かけて投入し、転職先の収入と合わせて追加積立も開始した。

ここまでで分かったこと
  • 40代の退職は再就職の有無で配分が変わる
  • 再就職ありならNISA比率70%も合理的

40代からのNISA運用は何が有利?

40代でNISAを始める最大の強みは「運用期間が20年以上取れる」ことだ。

当メディアの試算(国税庁・厚労省統計に基づく決定論的計算)によると、500万円を全世界株式インデックスで年利3%・20年運用した場合、約903万円に成長する。25年運用なら約1,046万円。40歳から始めれば65歳時点で退職金を2倍に増やせる計算だ。

退職金500万円をNISAで運用した場合のシミュレーション

運用期間年利2%年利3%年利5%
10年後約610万円約672万円約814万円
15年後約674万円約779万円約1,039万円
20年後約743万円約903万円約1,327万円
25年後約820万円約1,046万円約1,693万円

60歳で退職金をもらった人は運用期間が10〜15年しかない。40代なら20〜25年ある。この時間の差が圧倒的な有利性を生む。年利3%・20年で403万円の運用益、25年なら546万円。すべて非課税だ。

Bさん(45歳・製造業勤務・勤続22年・退職金1,120万円)は早期退職制度を利用して退職した。手取り約1,100万円のうち300万円を定期預金、800万円をNISAに配分。40代から20年以上の運用を見据え、全世界株式インデックス1本で運用を開始。再就職先の企業型DCとの併用で、65歳時点の資産総額は約2,500万円を目標に設計した。

ここまでで分かったこと
  • 40代なら運用期間20年以上。60代退職より圧倒的に有利
  • 500万円・年利3%・20年で約903万円。非課税の恩恵が大きい

勤続20年で早期退職した場合の注意点は?

勤続20年と21年で退職所得控除の計算式が変わる。この1年の差が手取りに直結する。

退職所得控除は勤続20年以下が「40万円 × 勤続年数」、21年以上が「800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)」だ。21年目から1年あたりの控除額が40万円から70万円に跳ね上がる。

勤続年数と退職所得控除の違い

勤続年数退職所得控除前年との差額
19年760万円+40万円
20年800万円+40万円
21年870万円+70万円
22年940万円+70万円

もし退職時期を1年遅らせて勤続21年にできるなら、退職所得控除が70万円増える。退職金1,026万円の場合、勤続20年では課税退職所得113万円・税額約17万円だが、勤続21年なら課税退職所得78万円・税額約12万円に減る。たった1年の差で約5万円の手取り増だ。

ここまでで分かったこと
  • 勤続20年と21年で控除の増え幅が40万→70万円に変わる
  • 退職時期を1年遅らせるだけで手取りが数万円増える

まとめ:勤続20年は「手取り確認→配分設計→長期運用」の順で

勤続20年の退職金運用は、3つのステップで進める。

  1. 退職所得控除800万円で手取りを計算し、「退職所得の受給に関する申告書」を必ず提出する
  2. 再就職の有無に応じて生活防衛資金の額を決める(ありなら200万円、なしなら400万円)
  3. 残りをNISAで全世界株式インデックスに投入する(2〜3年計画)

勤続20年の退職金は定年退職の約半分。しかし40代なら運用期間は定年退職者の2倍ある。手取りを最大化して堅実に運用すれば、20年後には定年退職者と同等以上の資産を築ける。まず手取りを確認し、それから配分を考える。この順番さえ守れば、1,000万円の退職金は20年後に約1,600万円に化ける。