退職金2,000万円を全額定期預金に入れたAさんは、10年間で受け取った利息が約60万円だった。同じ2,000万円を個人向け国債(変動10年)に入れたBさんの利息は約120万円。差額は60万円。しかもBさんは金利上昇のたびに利息が増え、Aさんの固定金利は10年間そのままだった。

個人向け国債(変動10年)の仕組みと利回りはどうなっていますか?

個人向け国債(変動10年)の適用利率は半年ごとに見直され、2024〜2025年の発行分で年0.5〜0.7%程度。元本は国が保証する。

個人向け国債とは、日本国政府が個人投資家向けに発行する債券のことだ。変動10年・固定5年・固定3年の3種類があり、退職金の運用には金利変動に対応できる変動10年が最も適している。

個人向け国債3種類の比較

種類期間金利タイプ最低保証利率中途換金
変動10年10年変動(半年ごと見直し)年0.05%1年後から可能
固定5年5年固定年0.05%1年後から可能
固定3年3年固定年0.05%1年後から可能

変動10年の最大の特徴は、実勢金利に連動して半年ごとに適用利率が変わること。金利上昇局面では利息が増え、金利低下局面でも最低保証利率0.05%で元本は守られる。

ここまでで分かったこと
  • 変動10年は半年ごとに金利が見直される
  • 最低保証利率は年0.05%。元本は国が保証

退職金2,000万円を国債に入れるといくら増えますか?

退職金2,000万円を個人向け国債(変動10年)に入れた場合、適用利率0.6%なら年間利息は約12万円(税引前)、税引後で約9.6万円になる。

退職金2,000万円の国債運用シミュレーション

適用利率年間利息(税引前)年間利息(税引後)10年間の利息累計(税引後)
0.3%6万円約4.8万円約48万円
0.5%10万円約8.0万円約80万円
0.6%12万円約9.6万円約96万円
0.8%16万円約12.8万円約128万円
1.0%20万円約16.0万円約160万円

利息には20.315%の源泉分離課税がかかる。適用利率0.6%の場合、年間12万円の利息から約2.4万円が税金として引かれ、手取りは約9.6万円だ。

10年間で適用利率が平均0.6%なら税引後利息は約96万円。定期預金(年0.3%)の約48万円と比べて倍近い差が出る。

ここまでで分かったこと
  • 2,000万円・利率0.6%で年間利息は税引後約9.6万円
  • 10年間の税引後利息は約96万円。定期預金の倍

個人向け国債と定期預金はどちらが有利ですか?

金利上昇局面では国債(変動10年)が有利、金利固定局面では大きな差はない。

個人向け国債(変動10年)vs 定期預金の比較

比較項目個人向け国債(変動10年)定期預金(10年)
利率(2024〜2025年)年0.5〜0.7%(変動)年0.2〜0.4%(固定)
元本保証あり(国が保証)あり(預金保険1,000万円まで)
中途換金1年後からペナルティ小中途解約で金利大幅低下
金利上昇時半年ごとに利率上昇契約時の固定金利のまま
税金源泉分離課税20.315%源泉分離課税20.315%
購入単位1万円から金融機関による

定期預金の最大のリスクは、金利が上がっても契約時の低い金利で固定されること。変動10年の国債なら半年ごとに見直されるため、将来の金利上昇を取り込める。

また、定期預金は1,000万円を超える部分は預金保険の対象外だ。退職金2,000万円の場合、1,000万円を超える部分は銀行が破綻すると保護されない。国債は金額の上限なく国が元本を保証する。

当メディアの試算(財務省・日銀統計に基づく決定論的計算)によると、今後10年間で金利が0.5%→1.5%に上昇するシナリオでは、変動10年の累計利息は定期預金の約2.5倍になる。

ここまでで分かったこと
  • 定期預金は金利上昇の恩恵を受けられない
  • 国債は金額上限なく元本保証。預金保険の1,000万円制限がない

個人向け国債とNISAはどう組み合わせればよいですか?

退職金の運用はNISAで「攻め」、国債で「守り」の2本立てが手取りを最大化する。

Cさん(60歳・退職金2,000万円)のケースで最適配分を考える。

退職金2,000万円の攻守バランス配分

用途金額配分先期待利回りリスク
生活防衛資金600万円定期預金・普通預金0.3%ほぼゼロ
攻めの運用1,000万円NISA(インデックス投資)3.0%中(元本変動あり)
守りの運用400万円個人向け国債(変動10年)0.5〜1.0%ほぼゼロ(元本保証)

20年後のシミュレーション

  • 定期預金600万円(年0.3%): 約636万円
  • NISA1,000万円(年3%): 約1,806万円(運用益806万円は非課税)
  • 国債400万円(年0.6%): 約449万円(税引後)
  • 合計: 約2,891万円(元本2,000万円→+891万円)

全額を国債に入れた場合の20年後は約2,254万円(税引後)。NISAと組み合わせることで約637万円の手取り差が生まれる。

ここまでで分かったこと
  • NISAで「攻め」、国債で「守り」の2本立てが最適
  • NISAと国債の組み合わせで全額国債より637万円多い

個人向け国債を買うときの注意点は何ですか?

国債を買うときに知っておくべき注意点は4つある。

1. 中途換金のペナルティを把握する

1年経過後ならいつでも換金可能だが、直近2回分の利息(税引前)× 0.79685が差し引かれる。適用利率0.6%の場合、2,000万円の中途換金で約19万円のペナルティになる。ただし元本は全額戻る。

2. 購入はネット証券が手数料ゼロ

銀行の窓口でも買えるが、ネット証券のほうが手続きが簡単で手数料もゼロ。SBI証券・楽天証券・マネックス証券などで毎月購入可能だ。さらにキャッシュバックキャンペーンを実施している証券会社もある。

3. 毎月発行されるため分散購入が可能

個人向け国債は毎月発行される。退職金を一度に入れるのではなく、3〜6回に分けて購入すれば、金利水準の変化を平均化できる。

4. 変動10年は満期10年だが途中換金で実質的に期間を調整できる

10年満期だが、1年経過後ならいつでも換金可能。5年で換金しても元本は保証される。実質的には「1年以上のいつでも引き出せる元本保証商品」として使える。

個人向け国債の購入チェックリスト

確認項目内容
購入先ネット証券がおすすめ(手数料ゼロ)
購入タイミング毎月発行。3〜6回に分散購入が理想
最低購入額1万円から
中途換金1年後からOK。ペナルティは直近2回分の利息のみ
税金利息に20.315%の源泉分離課税
ここまでで分かったこと
  • 中途換金は1年後から可能。元本は全額戻る
  • ネット証券で手数料ゼロ。毎月購入可能

まとめ:退職金の「守り」の運用先として国債は最適解の一つ

退職金で個人向け国債(変動10年)は、元本保証・変動金利・高い流動性を兼ね備えた「守り」の運用先として優秀だ。

  1. 元本保証: 国が保証。預金保険の1,000万円制限がない
  2. 変動金利: 半年ごとに見直し。金利上昇局面で利息が増える
  3. 高い流動性: 1年後からいつでも中途換金可能
  4. 利回り: 年0.5〜0.7%程度。定期預金の約2倍

ただし国債だけでは手取りを最大化できない。NISAでインデックス投資と組み合わせ、退職金の20〜30%を国債に配分するのが最適解だ。「攻め」と「守り」のバランスで、退職金を1円でも多く残そう。